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【初心者向け】定性分析の王道プロセス「インタビュー」のコツ

こんにちは

前回、定性分析に関する記事を書きました。

【初心者向け】定性分析の基本・基礎 こんにちは 先日、定量分析の記事を書きましたので、今回は定性分析の記事を書いてみます! https://nokominzo...

今回は、定性分析の王道プロセスである「インタビュー」を取り上げ、初心者向けにそのコツをご紹介します!

では、いきましょう!

インタビューの基本プロセス

インタビューの基本プロセスとしては、

  1. 知りたい情報を整理した上で質問表を作成する
  2. その情報を持っている人を見つけ、接触する
  3. そして会話で情報を引き出す

という形になると思います。

特に、「2.その情報を持っている人を見つけ、接触する」については、

  • きちんとアポを取り、面談形式で話し、謝礼金も払う

というパターンもあれば、

  • お客さまを装って入店し、店員に話しかけて教えてもらう
  • “ナンパ” のように、道行く人やお店から出てきた人へ、突撃取材する

といったパターンもあります。

スパイやジャーナリストになった気になって、色々試してみましょう。

前者のアポを取るパターンのときは、
ビザスクのようなインタビュー先を紹介してくれるサービスを使う場合もあれば、
面識もないのにいきなり電話して、

ある人

私はXXXの者ですが、こういう情報を探しているので、よかったらインタビューの場を設けさせてください!

もしくは、このまま電話で教えてください!

とお願いする場合もあります(「コールドコール」と呼ばれます)。

あと最近はSNSが発達しているので、FacebookやTwitterのダイレクトメッセージで「インタビューさせてくれませんか」とお願いするパターンも多いですね。

なお、後述する質問票と照らし合わせて、

あなた

これらの質問を答えられる人かな?

と、適切なインタビュー相手なのかを確認するタイミングは必ず設けましょう

具体的に言うと、

  • 経営戦略の話を聞きたいのに、末端の社員をインタビュー先にしても意味ない
  • 逆に、実際の営業現場の状況を具体的に知りたいのに、経営幹部に聞いても意味ない
  • ITソリューションの開発のコツについて聞きたいのに、開発されたITソリューションを提供しているSEの人たちに聞いても意味ない

といった感じです。

上記の例だと聞く相手もわかりやすいですが、質問によっては「誰に聞くべきか」が悩ましい時があるので、しっかり検討するステップは入れておきましょう。

質問表の設計

質問表の設計は、非常に重要です。
質問表のクオリティが、インタビュー結果にかなり影響を与えます。

いくつか覚えておくべきことがあるので、ご紹介します。

ただし、以下の全てを常に守る必要はありません。
実務上は、インタビュー時間などと照らし合わせ、盛り込めるものだけを組み込むことになります。

意見ではなく行動から聞こう

インタビュー初心者は、いきなり

質問者

カフェには、どういったものを求めますか?

行きたいと思うカフェはどういったものですか?

相手の意見から聞きがちですが、これはやめましょう。

こう聞かれると、相手は大抵、

回答者

やはり、雰囲気が良くて落ち着くカフェに通いたいと思いますね〜

一般論を回答してしまいます。

そうではなく行動から聞くようにしましょう。

例えば、以下の流れがいいと思います。

質問者

普段はどういったカフェに通ってますか?

回答者

近くには色々カフェがあるんですが、私はよくコメダ珈琲に行きますね〜

質問者

なぜコメダ珈琲に通っているんですか?

魅力を教えてください。

回答者

やっぱり、あの凄まじいボリュームが好きでね〜

コメダ珈琲は楽しいんですよね

このような形で、まずは行動について質問し、その行動に沿って相手の意見を聞くと、相手は一般論ではなくリアルな心情を語ってくれるようになります

リサーチにおいて有名なエピソードに「マクドナルドのサラダ」があります。

マクドナルドが、

マクドナルド

マクドナルドにどんなメニューがあると嬉しいですか?

と調査すると、

ユーザー

サラダがあると健康的でいいな〜

という意見が多かったので、サラダをメニューに追加したら、全然売れなかったというエピソードです。

悲しいですね。

これは、回答したユーザーたちが嘘をついていたという訳ではなく、リサーチ時にはホントに「サラダが良い」と思ったんだと思います。

ただ、いざマクドナルドで注文する際は、皆健康なんてあまり考えておらず、サラダが購入されなかったということだと思います。

そもそも健康に気を使ってるならファストフードなんて行きませんしね。

オープン質問 → クローズ質問の順で

質問の順番のコツですが、

  1. まずはオープンクエスチョンをして、
  2. 次にクローズドクエスチョンをする

という流れが鉄板なので、覚えておくと便利です!

理由としては、質問者の予想を超えたファクトを取れる可能性があるからです。

例えば「ゲーム業界の動向把握」を目的としてインタビューする際に、いきなり、

質問者

直近のゲーム業界の主要トレンドとしては

  • ゲームソフトの売り切りビジネスではなく、オンラインのサブスクビジネスへの転換
  • ゲームメーカーのM&A活発化
  • ・・・

といったものがあると思いますが、認識合いますかね?

クローズドクエスチョンで聞いてしまうと、どうしても回答者はこれに引っ張られてしまうので、

回答者

(ゲームの内容よりも、ビジネス的な観点が聞きたいのかな?)

はい。トレンドとしてはそのくらいかと思います。

M&Aは中国メーカーが特に活発でねー

と、議論がそこに収斂してしまいます。

一方、まずはじめに

質問者

直近のゲーム業界の主要トレンドとして、どういったことがありますかね?

とオープンクエスチョンで質問していたら、

回答者

大手メーカーはオープンワールド型の作品を作ってて、中小メーカーは従来のエリア切り替え型作品を作ってて、住み分けが始まってるねー。

オープンワールド作品を作るときと、エリア切り替え作品を作るときでは、必要なスキルが違うから、エンジニアも二極化してるよ

といった予想もつかなかった回答が出てくる可能性があります。

なので、

まずはオープンクエスチョンをして、質問者の予想を超えた回答が出てこないか確認する
その上で、クローズドクエスチョンをして、元々確認したいと思っていた内容への感触を聞く。

という流れでやるのがオススメです。

ただし、時々、オープンクエスチョンをすると、質問者の想定している観点/粒度感からは程遠い回答が返ってくることがあります。

先ほどの例でいうと、

回答者

最近のゲーム業界のトレンドとしては、「SNSが発達したせいで、ゲーム内容のデマが流れやすくなった」ということがあると思いますね。

といったイメージです。

質問者が欲しい観点/粒度感と異なる内容で議論してもインタビューの時間が勿体無いので、そういった場合はさっさとクローズドクエスチョンに移行することになります。

なので、クローズドクエスチョンの準備はマストです。

はじめにワークをしてもらおう

リアルな相手の心情を聞き出すため、はじめに簡単なワークをやってもらうことがよくあります。

例えば、休日の典型的な過ごし方を手書きで書いてもらったりします。

相手の意見を深めてもらうため、「どういった分類があると思いますか?」のようなワークをはじめにやってもらう場合もあります。

NHKの番組とかでよくやっている印象です。

前提から順番に聞こう

例えば、あなたが回転寿司チェーンの社員で、自社店舗に対する意見をユーザーから聞きたい時に、

質問者

回転寿司チェーンのXXXをご利用したことはありますか?

と、いきなり自社のことを聞くのではなく、

質問者

そもそも外食ってどのくらいの頻度でしますか?

質問者

外食の際に、回転寿司を使うことはありますか?

質問者

回転寿司チェーンのXXXをご利用したことはありますか?

といった感じで、「外食をするか → 回転寿司を利用するか → 自社チェーンを使うか」と前提から質問していった方が示唆が出やすくなります。

質問の仕方を工夫しよう

聞きたい情報は同じでも、質問の仕方で回答の質が変わってきます。
より深い情報が取れるよう、質問文は複数考えて、より良いものを選ぶようにしましょう。

いくつかパターンがあるので見ていきましょう!

別の言葉に置き換える

質問する際は、様々な言い換えを駆使しましょう。

例えば、「あなたは今、深刻な問題を抱えていますか?」と質問するのと、

質問者

夜眠れないほど心配に思っていることは、今ありますか?

言い換えて質問するのでは、返ってくる回答が変わったりします。

逆の質問をする

また、逆の観点から質問するというテクニックもあります。

就活に強い学生はどういう人だと思いますか?」と質問するのと、

質問者

企業側は、どういった学生を採用したいと思いますか?

と、学生側/企業側という逆の観点から質問するのでは、返ってくる回答が変わったりします。

他の例としては、

  • なぜ牛乳配達サービスを利用していない人が増えていると思いますか?
  • 現代でも引き続き牛乳配達サービスを利用している人は、どういった理由から利用していると思いますか?

といった感じで、「利用している人/していない人」両方の観点を聞く場合などがありますね。

極端な質問をする

あえて極端な状況を設定することで、回答者の考えが深まったりします。

例えば、大学の先輩に就活のアドバイスをもらいたいときに、「就活の面接に向けて何をしたら良いですか?」と単純に聞くのと、

質問者

就活の面接までにあと2週間しかないとしたら、その2週間を使って先輩はどういった準備をしますか?

極端な状況を設定して聞くのでは、回答が異なる場合があります。

他にも、自分の人生を考える上で、「私は何をしたいんだろう?」と単純に自問自答するのと、

質問者

もしお金がいくらでもあるとしたら、私は何をしたいんだろう?

と、お金の制約を取っ払って自問自答するのでは、回答が異なる場合があります。

インタビュー時の対応

昔、実際にインタビューをする段階のコツを知りたくて、世の中のインタビューの本を色々と読んだんですが、

  • 誠意を持って話を聞こう
  • はじめにインタビューの目的などを相手に丁寧に説明し、安心してもらおう

といったことが並んでいて、

昔の私

いや、それらが大事なことはわかってるけどさ…

と思ってました。

そんな中、実践でいくつかポイントを見つけたので、そちらをご紹介します。

全部の質問を聞こうとしない

質問表を作成すると、その質問を全て聞かなければいけない気持ちになりますが、無理して全部を聞かなくても大丈夫です。

もちろん、時間が間に合えば全部の質問を聞けば良いですが、実際問題として

  • 回答者は往々にして回答できる項目が限られる
    (全ての質問に高品質の回答ができるわけではない)
  • 全部の質問を聞こうとすると、一個一個の質問が雑になって、全体的に浅いインタビューになってしまう

ということがあります。

インタビューをする際は、一人だけに聞かず、複数人に聞くことの方が多いと思います。

なので、「この回答者はこの領域が詳しそうだ」と分かればその領域を中心に深掘りし、ほかの領域は他の回答者のインタビューで確認するくらいのスタンスでいいと思います。

事実と意見を区別しながら聞く

「相手の話は事実なのか意見なのか」をきちんと区別しながらインタビューしましょう。

実際、インタビューをしていると、

質問者

その発言は、単なる意見なのか?

それとも根拠のある事実なのか?

と混乱する時があるので、そういう時はしっかりと確認しましょう。

例えば、

回答者

最近は、本社からのコスト削減圧力が強くて、安全管理が疎かになっているんだよね

質問者

そうなんですね。

安全管理が疎かになっているというのは、何か事故が起きてるんでしょうか?

回答者

いや、事故は幸いまだ起こってないよ。

でも現場の連中ではよくそう話しているし、関西支部に出張した時も、関西の現場の人は同意見だったよ。

質問者

なるほど。

実際に、現場の人たちの間でそういった懸念が明確に出ているんですね。

といった感じです。

相手の発言を深掘ろうとする

相手の発言内容について、常に「深掘れないかなぁ」と意識を向けておきましょう。

「深掘る」については以前記事を書いているので、そちらも参考にしていただければ。

【初心者向け】「検討を深める」「深掘る」とはどうやるの? こんにちは! 皆さん、仕事の際に上司や先輩に、 上司 考えが浅い! もっと深掘って考えろ! と言われたことは...

では順番に見ていきましょう!

理由を深掘る

インタビューでは、「whyと聞きまくってやる!」くらいのスタンスでやった方がいいと思います。

例えば、

回答者

うちが作っている製品は、簡単に製造できるから、今後どんどん競合が増えていくと思うよ

質問者

なんでですか?

製品内部は複雑になっている印象ですが。

回答者

いや、パーツは部品メーカーから調達しているから、製造といってもパーツを組み合わせるくらいなんだよね。
技術的には簡単。

質問者

パーツを組み合わせるだけといっても、工場のラインは高額なので簡単には用意できないですよね?

技術的に簡単だとしても、財務的には簡単ではないんじゃないですか?

回答者

いや、最近は中国メーカーがOEMを始めてるのよ。

自社で工場のラインを持つ必要すらないの。

といった感じです。

もし「why?」と聞いて相手が回答に窮していたら、考える時間を設けたり、質問を言い換えたりして、考えることをサポートしましょう

曖昧なことを言われたら具体を聞く

話してくれた内容が曖昧なことは結構あるので、そういう場合は必ず具体を確認しましょう。

具体1:数字を聞こう!

「たくさんの〜」「結構な頻度で〜」といった数量・頻度などの言葉が出たら、必ず具体的な数字を聞きましょう。
感覚値でいいので、具体的な数字はなるべく聞くべきです。
だいたい3人くらいの感覚値を聞けば、かなり現実の数字に近づいてくる印象です。

例えば、

回答者

うちの地域は、Uターン就職する人が多くてね。
最近は特に多い印象だよ。

質問者

Uターン就職する人が多いとのことですが、どのくらいの割合ですかね?

また、「最近」とはどのくらいの期間でしょうか?

回答者

え!具体的な数字なんて把握してないよ

質問者

正確な数字じゃなくて大丈夫ですよ!

感覚的にどのくらいですか?

回答者

うーん…
感覚だと、Uターン就職する人は、県外の大学に進学した人のうち4割くらいかな。

特に、3年前くらいから割合が増えている印象だよ。

といった感じです。

具体2:固有名詞(or ”修飾語のついた一般用語”)を聞こう!

「一般用語」が出てきたら、可能な限り固有名詞を聞きましょう。
固有名詞が無理でも、詳細を聞いて、「修飾語のついた一般用語」に変換しましょう。

例えば、

回答者

ここ2,3年は、お客さんは店舗じゃなくてネットで工具を買ってる印象だね

質問者

「ネット」というのは、Amazonのことですか?

また、「お客さん」というのは、「”若い”お客さん」という理解で合ってますでしょうか?

回答者

いや、工具のネット購入に関しては、Amazonよりも「モノタロウ」の方がメジャーだね。

お客さんに関しては、若い人だけじゃなくて中年層もネットで買ってる印象だよ。
「シニア以外のお客さん」というのが正しいと思うね。

といった感じです。

具体3:対比を聞こう!

「ここが良い/悪い」といった ”相対的な内容” を聞くときは、具体的な対比を必ず聞きましょう。

例えば、

回答者

あのレストランは、パスタが美味しいんだよね〜

あと接客がいい!

質問者

パスタの味ですが、XXXなど他のレストランに比べ、どういった点が優れてるんでしょうか?

また、接客についても、XXXなど他のレストランに比べ、どういった点が優れてますか?

回答者

他のレストランのパスタも美味しいんだけど、あのレストランはあの低価格で美味しいから好きなんだよ。

接客は、他の店と違ってレジの会計が混まないからストレスが少ないの。

質問者

なるほど。「単純に味がいい」というよりは、「コスパが良い」という点に魅力を感じているんですね。

接客の観点だと、会計シーンを重視されているんですね。

といった感じです。

主観を言いづらそうだったら客観的な立場に変更してあげる

「あなたの意見を教えてください」と聞くと、発言しづらいと感じる人が一定数います。

そういう場合は「客観的な意見としてはどうですか?」と聞くようにしましょう。

例えば、

質問者

試食をしてどう感じましたか?

不満はありますか?

回答者

不満ですか!?

不満はないです…

質問者

試食品に不満がないということですね。ありがとうございます。

ちなみに、この試食品に不満に感じる人がいるとしたら、どんな点に不満を持つと思いますか?

回答者

そうですねぇ…

強いて言うなら、「匂いがちょっとキツい」と指摘する人はいるかもしれませんね

といった感じです。

おわりに

いかがでしたでしょうか?

初心者の方にとってお仕事の参考になれば嬉しいです!