こんにちは!
今回は、ロジカルシンキングの真髄かのように持て囃されている “MECE (ミーシー)” について書きます。
はじめに言っておくと、私はかなり「MECEにうんざりしているタイプ」です…笑
では、さっそく行きましょう!
MECEとは?
“MECE (ミーシー)” とは、「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略で、「漏れなく、ダブりなく」を意味する概念になります。
なぜ「漏れなく、ダブりなく」が大事なのかというと、これを満たしていないと網羅感がなくなるからです。
網羅感がないと、クライアントが納得してくれない可能性があります。
例えば、「関東エリアの都道府県は?」という問いが会った時に、
東京、神奈川、埼玉、千葉!
と答えるのは、漏れがありますね。
群馬や栃木もありますから。
一方で、
東京、神奈川、埼玉、千葉、群馬、栃木、横浜!
と答えるのはダブりがあります。
横浜は神奈川に含まれますからね。
こういった漏れやダブりが生じないように整理するための切り口や考え方をMECEといいます。
これだけ聞いても正直よくわからないと思います。
概念の説明を聞くよりも、実際に具体例を見た方がイメージがつくと思うので、列挙してみます。
MECEの具体例
「漏れなくダブりもない」といわれる切り口の具体例です。
- メリットとデメリット
- ストックとフロー
- インプットとアウトプット
- 需要と供給
- 公と私
- 内的と外的
- 全体と部分
- 一般と特有
- 新規と既存
- 個人と法人
- 都市と田舎
- 目的と手段
- 直接と間接
- 自発と強制(アメとムチ)
- 年齢系:10代、20代、30代・・・ など
- 性別系:男性、女性 ※最近はLGBTなどを考慮するパターンもあり
- 地域系:北海道、東北、関東・・・ など
- 所得系:年収1000万以上、500万以上1000万未満、500万未満 など
- 時間系:朝昼晩など
- 時系列系:1990年代、2000年代、2010年代・・・ など
- 因数分解系:
「利益 = 売上 – 費用」なので、利益を論じる際に、売上と費用に分ける。
他には、「売上 = 価格 × 販売数量」なので、売上を論じる際に、価格と販売数量に分ける。 - 3C:Customer(顧客・市場)、Competitor(競合他社)、Company(自社)
- 4P:Price(価格)、Place(場所)、Product(商材)、Promotion(宣伝・広告)
- ヒト・モノ・カネ・情報
他にもたくさんありますが、パッと思いつくものをあげました。
MECEのイメージはつきましたでしょうか?
MECEを作る上でのポイント
MECEを作る上でのポイントを、
- ダブりがないか確認する
- 漏れがないか確認する
の2つ観点からご紹介します。
ダブりがないか確認する
まず、ダブりがあるかどうかを判断するには、整理されるものの粒度を揃える必要があります。
例えば、「グルメ関係の趣味といえば?」という問いに対して、
料理、飲み会、バー開拓…
と答えたとして、これはダブりがあるでしょうか?
ダブってるようにも見えますし、ダブってないようにも見えますね。
正直、粒度がバラバラで判別がつかないです。
シチュエーションやら、具体的な行動やらが色々と入り混じってます。
こういう時は粒度を揃えましょう。
今回は、「バー開拓」に合わせて、具体的な行動に揃えてみます。
すると、
- 料理を作る
- 飲み会で仲間とはしゃぐ
- おしゃれなバーを開拓する
といった感じになりまして、
ダブってなさそうだなー
と判断できると思います。
漏れがないか確認する
また、漏れがあるか否かを判断するためには、「全体」が決まっている必要があることに注意です。
はじめにも出てきた「関東エリアの都道府県は?」の問いに対して、
東京、神奈川、埼玉、千葉、群馬、栃木!
という回答は、MECEになっているでしょうか?
少なくとも、「全部が都道府県名になっている = 粒度が揃っている」ので、ダブりは無さそうですね。
では漏れはあるでしょうか?
漏れがあるか否かを判断するためには、「全体は何か?」を考えなければいけません。
今回の「全体」は、「関東エリア」ですね。
ここでいう関東エリアが「関東地方」という意味であれば漏れはないでしょう。
一方で、ここでいう関東エリアが「電力のエリア」という意味だと、東京電力の管区である静岡、山梨が漏れていることになります。
なので、結局は、
関東エリアが意味するところは何か?
と考えることが重要になってきますね。
MECEとフレームワーク
ちなみに、MECEの世界では、
これは、「漏れなくダブりのない切り口」ということになっている!!
というものもあります。
上記の「MECEの具体例」でいうと、
- 3C
- ヒト・モノ・カネ・情報
などがそうですね。
これらは一般的にフレームワークと呼ばれます。
フレームワークは、経営分析の現場や、研究結果から帰納法的に生まれてきたものなので、「そういうものなんだ」と割り切るしかないです。
日本の慣用句でいうと「心技体」とかもフレームワークに該当しますね。
MECEの使い方
世間一般では、
MECE = ロジカルシンキングの真髄!
みたいな勢いで語られていますが、所詮MECEは整理のためのものです。
つまり、見落としがないかを整理して確認するためのもので、何か新しいアウトプットを生み出すものではありません。
なので、MECEにこだわり過ぎて検討が深まらないのは本末転倒です。
例えば、「ペットの動物は?」という問いがあったとして、
犬、猫、鳥。あと、爬虫類もいるな…。金魚もペットかも…。
あ、粒度が揃っていない!
MECEにするには粒度を揃えなきゃ!
となって、
ペットの動物は、哺乳類、鳥類、魚類、爬虫類!
と整理したとしたら、
確かにMECEだけどさ…
このMECEを使ってどう検討を深めるつもりなの?
と突っ込まれるのが関の山です。
先日の記事で書いた通り、深掘った検討をするためには、具体的に考えることが重要です。
ただ、検討に耐えるだけの具体的な粒度感に設定すると、往往にして「漏れがない」と厳密に言い切ることはできなくなります。
つまり、厳密なMECEを作ることは難しくなります。
例えば、先ほどの「ペットの動物は?」に対して、
犬、猫、文鳥、金魚、蛇…
と具体的に上げていくと、どこまで行っても終わりがなさそうで、どこまで行っても 「漏れがない」と厳密に言い切れないことは想像に難くないと思います。
なので、MECEを使う際は、厳密なMECEを作ることは諦め、「MECE感を作る」ことに専念します。
実務では、「ペットの動物は?」に対して、
ペットの動物は、まず、「哺乳類、鳥類、魚類、爬虫類」に分かれます。
そして、「哺乳類」はさらに、犬、猫に分かれて…
と何層かの構造にして網羅感を出したりします。
ただ、やはり大事なのは、「犬、猫、文鳥、金魚、蛇…」という具体的な列挙の部分です。
検討を深めているのは、「哺乳類、鳥類、魚類、爬虫類」という抽象的な部分ではなく、この具体的な部分だからです。
MECEを使う際は、この点を注意しましょう。
そもそもMECEってどこまで必要なのか?
これまでこの記事では、「MECEは重要である」という前提で書かれていますが、本当にそうかは検討の余地があります。
「網羅感とかMECEが重要な時がある」というのは私も理解してますが、網羅感とかMECEが常に必要だと思うのは絶対に間違いで、必要かどうかは目的や費用対効果に照らして判断すべきです。
これは私が持っている問題意識の一つですが、コンサル(特に戦コン)の方たちは網羅感とかMECEとかに必要以上に固執しすぎだと思います。
例えば、「課題の洗い出し」をする場合、関係者にインタビューなどをした上で、
商品の調達には、AAAという課題があります。
また、商品の流通には、BBBという課題があります。
この二つの課題にフォーカスして解決を図るべきです。
と整理すると、
本当に課題はそれだけなのか?
「商品の販売」という観点の課題もないのか?
と指摘をされたりします。
「商品の販売面」に課題があり得ることは論理的には分かります。
一方、現実問題として「深刻な課題が網羅的かつ均等に散らばっている」という状況は中々ないでしょう。
インタビューで、関係者が、
商品の「調達」と「流通」がネックになっていてね〜
と言っているのであれば、抜け漏れがあっても、それが「課題の中心」と捉えるべきと思います。
なお、MECEに関しては、『BCGの特訓』という本の中で、以下のような記述が出てきます。
BCGにおいて、大きな成長を遂げたコンサルタントに話を聞いてみると、その行動様式にいくつかの共通項があることがわかってきている。(中略)
それは大きく、以下の4つに分けられる。
ロジカルに言うとこの4つはいわゆるMECE(漏れなし、重複なし)な区分にはなっていないが、経験則を言語化したものとしてご容赦いただきたい。
『BCGの特訓』
この割り切り方は本当に素晴らしいと思いますし、皆が見習うべきだと思います。
これは私の認識ですが、「MECEであるべきだ」というのは、「資料は誤字脱字がないべきだ」というレベルのことでしかないと思ってます。
つまり、
基本的には、誤字脱字がないように気をつけるべき!
でも、本当に時間がなくてどこかを妥協しなければいけないのなら、誤字脱字の部分を妥協すべきだ!
ということです。
「網羅感はあるが、全体的に検討が浅い」よりも、「網羅感はないが、検討された部分は深掘りされている」の方が大事です。
この優先順位を間違えないようにしましょう。
おわりに
以上です。
仕事のご参考にしていただければ幸いです。