心構え

経営判断と政治判断、そして論理的思考について思うこと

最近つとに考えてしまうのが、ビジネスにおける “オーナー社長タイプ” と “サラリーマン社長タイプ” の違いです。
なぜ考えてしまうのかというと、私がだいぶサラリーマン社長タイプに苦手意識を持ってきてしまっているからだと思います(笑)

便宜上、オーナー社長タイプとサラリーマン社長タイプという言い方をしていますが、イメージとしては

  • オーナー社長タイプは、経営判断に重きを置いているタイプ
  • サラリーマン社長タイプは、論理的思考とそれを用いた説明責任に重きを置いているタイプ

という感じであり、つまり、オーナー社長であっても後者のタイプはいるし、逆にサラリーマン上がりでも前者のタイプはいることになります。

これらの2つのタイプとの付き合い方を考えながら、政治家と公務員の関係についても考えていきたいと思います。

思うことをつらつらと

サラリーマン社長タイプは、完璧に論理的な説明を求めるので、説得に時間がかかります。
論理的な説明に時間がかかる理由は、何かを検討する際に、限られた時間で全ての観点を考慮するのは難しいからです。
時間は限られているので、なおさら、その限られた時間を、重要な観点の深掘りに割り振るべきです(重要でない部分には最小限しか割り振るべきでない。)。

しかし、サラリーマン社長タイプは、完璧に論理的な説明を求めるので、「こういう観点が漏れているのではないか?」という指摘をよくします。
こちらとしても
「漏れてません。そういう観点があることを知っていますが、あえて捨ててます。」
という説明をしますが、それに納得してくれない人もいます。

本当にその観点を知りたがっているのであれば、「あー相手の興味のある論点を見落としていた」と反省するのですが、ただ重箱の角をつついている場合も多かったりします。
「提案された内容が信頼に足るものか否か?」を判断するための手法として、あえて細かいところを突いて、それに対してもキッチリ答えることができるかを確認している人が多いからです。
つまり、指摘された観点を追加で色々調べたとしても、その調査内容が、最終的な判断にほとんど影響を与えなかったりします。

ただ、網羅的な検討をしないと納得してくれないので、様々な検討をすることになり、当然、検討のために必要な時間は大きくなっていきます。

一方、オーナー社長タイプは、論理的な説明を求めていないです。
(自分のビジネスセンスと照らし合わせて)「行けそうか?行けなさそうか?」という観点でしか見ていないです。
なので、オーナー社長の関心ポイントと、プラスαの観点を深掘りすればよく、網羅的な検討は不要となります。

オーナー社長の関心ポイントを探るためには、アナログで感覚的な非論理的スキル(=万人が再現できるわけではないスキル)を用いるので難易度は高いですが、それを把握できれば、説得するのに必要な時間はかなり短くなります。

ここで、どちらが適切か?と考えると、オーナー社長タイプの方が適切だと思います。
なぜオーナー社長タイプが適切か?(逆にいうと、サラリーマン社長タイプが不適切か?)というと、ビジネスにおいて、厳密かつ論理的な意思決定なんて不可能だからです。

まず、意思決定をする上で必要となるデータは完璧には集まりません。
また、最後は「将来がわからない中で、どの選択肢を選ぶか?どの選択肢を捨てるか?」という価値判断(=経営判断)になります。

厳密かつ論理的な意思決定が不可能だとしたら、そこを目指すのは早々に諦めて、不完全な状態でも腹を括って決断した方が合理的です。
完全な情報がない中で「どちらにしようか」と決断することこそが経営判断であり、そしてそれは社長にしかできない仕事なのです。

また、効果という観点でも、

  • サラリーマン社長タイプに提案される内容は、万人が納得するように、どの観点から突っ込まれても大丈夫な”無難なもの”になっていく一方で、
  • オーナー社長タイプに提案される内容は、ツボを押さえてさえいれば後は自由なので、”尖ったもの”になっていく

という差があると思います。
当然、無難な戦略と、尖った戦略だと、尖った戦略の方が効果がでかいです。

だから私は、論理的なアプローチが苦手です。
「そこまで論理的に考える必要ある?」とすぐ思っちゃうし、それが顔に出てしまいます(そして上司から怒られる)。

ただ、そんな風に考えてしまうのは、経営コンサルという第三者の立場にいるからだとも思っています。
経営判断とかはそんな簡単なことではないでしょうし、実際に私が社長の立場になったら多分無難な方に流れると思います。
ギリギリまでロジックを追うべき場面と、経営判断をしてしまうべき場面は、別々に訪れるはずなので、常に経営判断をする、というのも違うと思いますし。

なので、実際、経営コンサルとして働いているときは、内心で色々思うときはありながらも、クライアントの方の要求には素直に答えようと頑張っています。
責任を取るのは、経営コンサルではなく、クライアントの方々なので、それは当然です。

そして、今回の記事の趣旨は、上記のような民間企業の事例を見て、政策立案に燃える公務員の方々に何か示唆はないか?と考えることだったりします。

で、公務員にとっての意味合いは?

上記の話は民間企業の話ですが、「政治の話でも通じるなー」と思った人は多いと思います。

実際、政治判断と経営判断は、シーンが政治かビジネスかという違いでしかなく、”確証がない中で決断していくこと”は同じです。

政治判断と経営判断がほぼ一緒だとしたら、オーナー社長タイプとサラリーマン社長タイプの事例から、政策立案に燃える公務員はどういった示唆を得ればいいでしょうか?

この民間企業の事例から、政策立案に燃える公務員が得るべき示唆は、

  • 自分の実現したい政策があるなら、”調整型ではない政治家”が権限を持った時を見計らって、尖った政策提案をすること
  • それを実現するためにも、普段から”調整型でない政治家”とは仲良くしておき、その人の関心ポイントを探しておくこと

だと思います。

ビジネスマンと違って、公務員は、どれだけ組織内で評価されても、トップにはなれません。
トップになれるのは選挙を通じて文字通り”選ばれし人間”となった者だけです。

なので、もしあなたが実現したい政策があるならば、それを実行してくれそうな”調整型ではない政治家”と普段から仲良くなっておく必要があります。
調整型の政治家は、無難なことが好きなので、尖った政策は好きではないです。

ただし、世間一般で言われる”調整型の政治家”と、この記事で書いている「論理的な説明(=無難な説明)が好きな調整型の政治家」には差があるので、そこは注意が必要です。
例えば、安倍政権下での菅官房長官は、世間では「調整などに長けた実務型」と呼ばれてますが、どう考えても無難なことが好きなタイプではないです。
無難なことが好きなタイプは「携帯電話の通信料を4割減させる」なんて言わないです。
菅官房長官の「調整」とは、「意見が色々あるテーマを、豪腕を使って一つの方向性にまとめる」という意味の「調整」であって、どちらかというと政治判断をするタイプだと思います

なので、もしどうしても実現したい政策がある公務員は、こういったタイプの政治家が自分の議会にいないか常に探し、接近する努力をするべきだと思います

また、政治判断をするタイプの政治家がトップになった時は、その人を説得して、政策を実現していかなければいけません。
その手のタイプの政治家は、やはりオーナー社長のように独自の関心ポイントがあるので、そのツボを抑えているかどうかで政策を判断することになります。

なので、政策実現を目指す公務員は、そのツボを常に探す努力をしなければいけません。
ツボを理解した結果、自分の実現したい政策とバッティングして、自分の政策の修正が必要になるかもしれませんが、その際に、修正してでも実現を目指すのか、それともまた別の機会を待つのかは、まさにその公務員の方の”政治判断”をするタイミングでしょう。

今回は以上です。