フェルミ推定

フェルミ推定の実例 – ジムの市場規模は?

こんにちは!

先日、フェルミ推定の考え方や、フェルミ推定で使う数字を記事にしました!

その後、

読書

フェルミ推定の具体的なイメージを知りたい!

というご要望をいただいたので、せっかくなので解き方の実例を紹介します。

お題は、「ジムの市場規模は?」です。

ちなみに、コンサルファームの面接では、

  1. フェルミ推定させた後、
  2. その数字を使ってケース問題をやらせる
    (売上を2倍にするには?利益を2倍にするには?など)

というのが一種の様式美になっています。

今回の場合は、もしコンサルファームであれば、

  • まず 「ジムの市場規模は?」 でフェルミ推定をしてもらい、
  • 次に 「シェアX%のジム運営会社の売上をX倍にするには?」 でケース問題をする

というパターンが多いと思います。

では実際に、「ジムの市場規模は?」 を解いてみましょう。
これは実際に私が制限時間10分で解いてみたものを、文章に起こしたものです。

先日の記事はこちらをご覧ください。

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フェルミ推定で覚えておいた方がいい数字 こんにちは! 先日、フェルミ推定の記事を書きましたので、併せて「フェルミ推定の際によく使う数字をまとめた」記事も書きたいと思いま...

まずは立式

今回は

ジムの市場規模 = A.日本にあるジムの数 × B.1つのジムの年間売上

と立式します。

数字を置けるか考える

前回の記事で、”ジムの数は4000” と紹介しているので、それを覚えていればそのまま

A.日本にあるジムの数 = 4000

と置けばいいです。

これを覚えてなかったとしても、

ある人

ジムの数は、おそらく映画館の数(800)よりは多いけど、警察署の数(6000)よりは少ないだろうな。

映画館の2倍くらいと考え、2000くらいかな?


といった感じで考え、と設定しても大丈夫です。

この点について、

ある人

この時点で実際の数とはダブルスコアの差になってるやん!

というツッコミをする人が多いですが、これで大丈夫なのです。

大事なのは、桁数を間違えないことと、説明を聞いてるディスカッション相手が

ある人

まぁ確かに、映画館よりは多くて、警察署よりは少ないだろうな。

と、ある程度納得してくれることです。

一方で、B.1つのジムの年間売上」の方は皆目見当が付かないので、この数字を出すために、この部分をさらに立式(分解)します。

2回目の立式

B.1つのジムの年間売上」を考えるに当たって、ジムの売上の構成を考えてみます。

例えば、

ある人

ジムって何を売って売上を立ててるだろう?

ジムの会員費のほかに、受付フロントでプロテインを売ってたり、ちびっ子向けに空手教室みたいのをやってるところもあるなぁ。

色々あるけど、ボリュームを考えると売上の大半はジムの会員費だろうから、ここに絞って概算しよう。

という感じです。
この”簡単にでいいので、どんなものがあるか幅出ししてみる”というのは非常に重要です。

ある人

ジムの売上にはジムの会員費しかないだろう

と考えるのと、

ある人

ジムの売上にはたくさんあるけど、ボリュームゾーンはジムの会員費だろうから、計算はここだけにしよう


と考えるのは、結果として出てくる式は同じであるものの、意味合いは全く異なります。

幅出しでは全てを網羅する必要はないですが、 ”幅出しをした”というプロセスが大事なのです。

では、ジムの会員費に絞って立式します

B.1つのジムの年間売上 = C.会員数 × D.月額利用料 × 12ヶ月

2回目の数値置きタイム

2回目の立式をして、数値を置ける場所はあるでしょうか?

C.会員数」はまだ皆目見当が付きません。

一方で、「D.月額利用料」については、ある程度の相場観はわかると思います。

ある人

どうせ 5000-15000円/円くらいかね〜


という感じでしょうから、間をとって

D.月額利用料 = 1万円

としましょう。

問題は、「C.会員数」です。

3回目の立式

C.会員数」を出すための計算式は色々考えられますが、今回は、

C.会員数 = E.ジムの一月の総利用人数(延べ数) ÷ F.1人の会員の一月の平均利用回数

としてみましょう。

E.ジムの一月の総利用人数(延べ数) 」はもう一回分解しないと数字を置けない気がするので、

  • E.ジムの一月の総利用人数(延べ数) = G.一日の総利用回数 × 30日
  • G.一日の総利用回数 = H.ジムが収容できる最大人数 × I.1日平均の稼働率 × J.1時間当たり回転率 × K.ジムの営業時間

とします。

「回転率ってなに?」と思った方は、以下の記事をご覧ください。

フェルミ推定とは? 主な計算式は? 今回は、フェルミ推定について記事を書きます。 フェルミ推定というのは、民間企業ではだいぶ市民権を得てきましたが、公務員の中ではま...

3回目の数値置き

では変数に数字を置いていきましょう。

F.1人の会員の一月の平均利用回数」については、

ある人

平日に1回、休日に1回くらいは行くだろうなー


と考え、5週間で10回
よって、F.1人の会員の一月の平均利用回数 = 10回

H.ジムが収容できる最大人数」については、

ある人

ランニングマシンが10台、エアロバイクが10台、筋トレマシーンが・・・

と考えると、だいたい100人は同時に運動できるかなー

よって、H.ジムが収容できる最大人数 = 100人

「J.1時間当たり回転率」については、

ある人

30分で運動切り上げる人は少ないだろうな。

だいたい1時間くらいは運動している人が多いのでは?


と考え、J.1時間当たり回転率 = 1

K.ジムの営業時間」については、

ある人

24時間運営のところもあるけど大宗では無いよなー。

一般的には、10:00-23:00とかかな?


と考え、ジムの営業時間 = 13時間

問題となる”稼働率”

「I.1日平均の稼働率」は、正直一番重要な数字です!

個人的な感覚だと、フェルミ推定で数字を置く際、整数自体は、その場その場をイメージすることで、割と簡単に数字を設定できます。
整数の場合は、ディスカッション相手も 「そこまで違和感ないな」 と聞いてくれることが多いです。
一方、比率になった瞬間に、数字を置くのが非常に難しくなります。

つまり腕の見せ所なので、ここは丁寧にやりましょう。

まず、

ある人

「ジムの稼働率」と一口にいっても、平日と休日とでかなり稼働率に差が出るだろうなー。

また、サラリーマンが働いている日中の時間と、退社した後の夜の時間では稼働率がだいぶ違うだろうなー

と考えました。

なので、

  • 平日 × 日中
  • 平日 × 夜
  • 休日 × 日中
  • 休日 × 夜

4パターンに分けて稼働率を考えることにします。

一番イメージしやすい 「休日 × 日中の稼働率」をまず考えると、ランニングマシンが10台あったら8,9台は埋まってる印象です。
なので、休日 × 日中の稼働率は、85%

逆に、平日かつ日中の稼働率は、ランニングマシンが1,2台くらいしか稼働していないと思うので、15%

同じように考えて、

  • 休日 × 夜の稼働率は、60%
  • 平日 × 夜の稼働率は、40%

くらいかな?としました。

ここでは、具体的な数字よりも、各パターン同士で整合性が取れていることの方が重要です。

ある人

いくらなんでも、平日 × 夜と、休日 × 夜の稼働率が一緒な訳が無い。

常識的に考えると、”働いてからジムに来る”ことになる 平日 × 夜 の方が、人が少ない。

つまり、稼働率は低いだろう。

みたいな感じで、各パターンを比較しながら数字を置いていきます。

経済学でいうと、基数的効用ではなく、序数的効用の考え方で数字を置く、といった感じですかね。

ここで、各パターンをまとめて1つの数値にするために、各パターンの加重平均を計算します。

  • 平日である確率は、5日/1週間(7日) = 5/7
  • 休日である確率は、2日/1週間(7日) = 2/7
  • 日中である確率は、日中が10:00-18:00と考え8時間、1日の営業時間は13時間なので、8時間/13時間 ≒ 2/3
  • 夜である確率は、日中でない確率なので、1 – 2/3 = 1/3

したがって、加重平均をとると

  • 休日(2/7)かつ日中(2/3)の稼働率は85%、つまり、2/7 × 2/3 × 85% ≒ 17%
  • 平日かつ日中の稼働率は、加重平均後は、7.5%
  • 休日かつ夜の稼働率は、加重平均後は、6%
  • 平日かつ夜の稼働率は、加重平均後は、10%

全部足し合わせると、I.1日平均の稼働率 ≒ 40%となります。

今は言葉で丁寧に解説しているので、だいぶ長い説明になってしまっていますが、本番ではチャチャっと加重平均の計算をすればOKです。

では計算して答えを出そう!

これまでの式と数字を組み合わせて計算してみましょう

E.ジムの一月の総利用人数(延べ数) = G.一日の総利用回数 × 30日
 = H.ジムが収容できる最大人数 × I.1日平均の稼働率 × J.1時間当たり回転率 × K.ジムの営業時間 × 30日
 = 100人 × 40% × 1 × 13時間 × 30日 = 520人/日 × 30日 ≒ 15,000人

C.会員数 = E.ジムの一月の総利用人数(延べ数) ÷ F.1人の会員の一月の平均利用回数
 = 15,000人 ÷ 10 = 1,500人

B.1つのジムの年間売上 = C.会員数 × D.月額利用料 × 12ヶ月 =1,500人 × 1万円 × 12ヶ月
 = 1,500万円/月 × 12ヶ月 = 1.8億円

ジムの市場規模 = A.日本にあるジムの数 × B.1つのジムの年間売上
 = 4,000店舗 × 1.8億円 ≒ 8,000億円

よって、ジムの市場規模は、8,000億円!

最後に、計算結果を感覚的にチェックしましょう

8,000億円という数字が出てきましたが、私の感覚ではちょっと多いかもしれないですね。

ただ、規模感(=桁数)という意味だと、このくらいだと思います。
解き始める前の相場観だと、

ある人

2000-4000億円くらいの市場規模かな?

と思っていたので、まぁまぁの結果だと思います。

ジムの年間売上が1.8億円となってますが、1日売上30万円の店で年間売上が1.1億円くらいになるので、全国平均のジムの年間売上はもっと低いかもです。

おわりに

いかがでしたでしょうか?

「フェルミ推定ってこんな感じなんだー」という相場観を持っていただけたら幸いです

ではでは