今回は、フェルミ推定について記事を書きます。
フェルミ推定というのは、民間企業ではだいぶ市民権を得てきましたが、公務員の中ではまだまだです。
ただ、非常に重要な考え方ですし、奥が深いものの次第点レベルまでは誰でも到達できるスキルなので、ぜひ活用いただければ幸いです。
フェルミ推定とは?
フェルミ推定とは、数字を概算するテクニックです。
様々な仮定を置きながら概算します。
ネットとかの定義を見ると 「調べてもわからないような数字を推定する〜」みたいなことが書かれていますが、調べれば分かる数字でも「一旦フェルミ推定で推定する」というのは普通にします。
フェルミ推定の主な利用シーンは?
フェルミ推定が主に使われるのは、会議中だったり、自分一人で考えている時です。
基本的にノートに手書きとかでチャチャっとやります。
例えば、戦略策定の際は、まず戦略の仮説を作って、それに沿ってリサーチや分析をしていくことになります。
一人でノートに向かって考えたり、数人でディスカッションしながら仮説を検討するんですが、その仮説構築の際は、
このユーザは、どのくらいの人数がいるのだろうか?
といった数字が必要になることが多いです。
一々それらの数字を調べながら仮説構築をしようとしたら、時間がいくらあっても足りないので、まずはフェルミ推定で数字を概算して、一旦仮説を最後まで作り切ってしまいます。
私なんかは「桁数さえ合ってればOK」くらいのスタンスで計算してますが、コンサル業界では、ここの計算の緻密さに命をかけてる人も結構いる印象ですねー。
フェルミ推定の考え方を応用して、事業計画の販売予測を計算したり、M&AのビジネスDDとかも計算したりします。
フェルミ推定って具体的にどんなもの?
身近な例を出すと、ぶらりと入った喫茶店で 、
この喫茶店の1日の売上高はいくらだろ?
と思った時は、
- 1日の売上高 = 1日の客数(延べ数) × 1人当たりの平均購入額
と分解し、さらに、
- 1日の客数(延べ数) = 席数 × 稼働率 × 1時間当たり回転率 × 営業時間
と分解したりして推定をしていきます(式の詳しい解説は下部に記載してます)。
一番有名なフェルミ推定の具体例は、フェルミ教授が出した「シカゴにピアノの調律師は何人いるか?」でしょう。
- 前提となる仮定として、「需要と供給はほぼ一致するだろう」と考えます。
- シカゴにおいて1年間で必要となるピアノ調律数(需要数)の計算式は、
ピアノ調律数(需要数) = シカゴのピアノの数 × ピアノ1台が1年間で必要な調律の数 - シカゴにおいて1年間で対応できるピアノ調律数(供給数)の計算式は、
ピアノ調律数(供給数) = 1人のピアノ調律師が1年間で調律できる数 × シカゴのピアノ調律師の数 - なので、「需要数=供給数」とし、式を変形すると、
シカゴのピアノ調律師の数 = ( シカゴのピアノの数 × ピアノ1台が1年間で必要な調律の数 ) ÷ 1人のピアノ調律師が1年間で調律できる数 - なので、あとはそれぞれの数字を
「”シカゴのピアノの数”は、シカゴの世帯数がXXだから、XX%がピアノを持ってると考えると・・・」
といった感じで設定していく - 最終的に「シカゴのピアノ調律師の数」が出てくる
というものです。
ここでフェルミ推定のポイントをいうと、抽象的に考えず、その場その場の状況を踏まえ具体的に考えることです。
例えば、上記の “ぶらりと入った喫茶店” の例だと、
この店はテイクアウトはやっているのかな?
やってるなら計算式に工夫が必要かな?
この店は夜はバーとして経営されているな。
なので、カフェとしての売上と、バーとしての売上は、しっかり分解して計算したがいいかな
といった感じで、オーダーメイドで具体的に考えていくことになります。
フェルミ推定の主な計算式は?
「フェルミ推定は、その場その場の状況を踏まえ、オーダーメイドで具体的に考えるべき」とはいうのは前提なのですが、よくある計算式は勉強しておいた方がいいです。
最低限の具体例を知っておかないと、自由な発想なんてできないですからね。
ということで、私がよく使う典型的な計算式を10個ほどご紹介します。
喫茶店の年間売上は?
基本式は、
喫茶店の年間売上 = 1日の客数(延べ) × 1人の平均購入額 × 30日 × 12ヶ月
となります。
さらに、「1日の客数(延べ)」を分解し、
1日の客数(延べ) = 店の席数 × 席の稼働率 × 1時間当たりの回転率 × 営業時間
となります。
喫茶店ではなく映画館の場合は、「店の席数」 を「映画館のスクリーン数 × 1スクリーン当たりの席数」に変えればいいですね
コンビニの年間売上は?
基本式は、
コンビニの年間売上 = 1日の客数(延べ) × 1人の平均購入額 × 30日 × 12ヶ月
となります。
さらに、「1日の客数(延べ)」を分解し、
1日の客数(延べ) = レジの処理能力 × レジの稼働率 × 営業時間
となります。
客数は、「コンビニにアクセスできる人がいくらいて、どれだけの割合が来店するか?」といった発想から計算する場合もあります。
薄型テレビの年間売上は?
基本式は、
薄型テレビの年間売上 = テレビの年間販売数 × テレビ1台の平均価格
となります。
さらに、「テレビの年間販売数」を分解し、
テレビの年間販売数 = 日本の世帯数 × 1世帯当たりのテレビ所持率 × 1世帯当たりのテレビ所持数 ÷ テレビの耐用年数
となります。
これは、
耐用年数が過ぎたテレビは買い換えるだろう
という発想の元での計算式になります。
これだと、そもそも家庭用のことしか考えてないので、法人向けのテレビ売上が含まれてません。
また、家庭用という意味でも、
- これまでテレビを持ってなかったけど、今年初めて買う世帯
- これまでテレビを持っていたけど、耐用年数の経過後はもうテレビを買い換えない世帯
が漏れていますが、どこまでを計算対象に含めるかは要検討です。
基本的には、
あーこの計算式だと、あれとそれが漏れちゃうなー
と、どの部分に不足があるのかをぼんやり意識しておけば問題ありません。
「どこまで緻密にやっても正確な答えにはならないのだから、だったらある程度のところで止めておこう」という発想が大事です。
家庭向けエアコンクリーニング業者の市場規模は?
基本式は、
家庭向けエアコンクリーニング業者の市場規模 = 1年間に国内でエアコンクリーニング業者が利用される回数 × 1回当たりのクリーニング代
となります。
さらに、「1年間に国内でエアコンクリーニング業者が利用される回数」を分解し、
1年間に国内でエアコンクリーニング業者が利用される回数 = 家庭が所持しているエアコンの総数 × エアコン1台当たりの1年間にクリーニングを行う回数 × クリーニング業者利用率
となります。
1つのジムの年間売上は?
基本式は、
1つのジムの年間売上 = そのジムの総会員数 × 会員一人当たりの月額利用料 × 12ヶ月
となります。
さらに、「ジムの総会員数」を分解し、
そのジムの総会員数 = そのジム全体の1ヶ月の総利用人数(延べ) ÷ 会員1人当たりの1ヶ月の平均利用数
となります。
この式についても、
月額利用料だけでいいのか?
プロテイン販売代とか、入会金とかが漏れてるんじゃないか?
といった疑問が出てくる人もいるかもしれませんが、ジムで購入するプロテイン代とか入会金なんて月額利用料に比べれば小さいので無視していいと私は思います。
日本のファッションモデルの数は?
基本式は、
日本のファッションモデルの数 = ファッション雑誌数 × 1つのファッション雑誌に所属しているモデル数
となります。
ファッション雑誌とモデルが紐づいている、という前提での計算式です。
実際に紐づいているかどうかは私にはわかりませんが、”CanCam専属モデル”とかよく聞くのでそんなに的外れではない気もしてます。
日本の自動販売機の数は?
基本式は、
日本の自動販売機の数 = 日本の人口 ÷ 自動販売機1台でカバーすることが想定されている顧客数
となります。
人口の多いところでは自動販売機が多いし、人口の少ないところでは自動販売機が少ないので、人口に比例して自動販売機が設置される、という発想です。
飲料系会社の打合せでは、
この街の人口は1万人か。
自動販売機は1台あたり50人の住人をカバーできるから、200台設置しよう
という会話が行われているのではないか?と思い、こんな式にしております。
来年の宅配ドライバーの必要数は?
基本式は、
来年の宅配ドライバーの必要数 = 来年宅配便で取り扱うであろう商品数 ÷ 宅配ドライバー1人で処理できる商品数
となります。
「1人で生み出せる供給量 × 人数 = 総供給量」なので、
「総供給量」と「1人で生み出せる供給量」がわかれば、どれだけの人数が必要になるかがわかる!
という発想です。
もしフェルミ推定が行政の仕事で活用されるとしたら、この計算式が一番出番がある気がします。
「来年宅配便で取り扱うであろう商品数」 の一番シンプルな計算式は、
来年宅配便で取り扱うであろう商品数 = 今年の取り扱い商品数 × 去年までの増減推移を踏まえた来年の予測増減率
とかでしょうかね(他にもたくさん出し方はあるでしょう)。
いろはすの年間売上は?
基本式は、
いろはすの年間売上 = ミネラルウォーターの市場規模 × いろはすのシェア
となります。
売上を出すときは「販売数×単価」、だけではなく、「市場規模×シェア」でも出せるので、覚えておきましょう。
今お家でゴロゴロしている人の数は?
基本式は、
今お家でゴロゴロしている人の数 = 今お家にいる人の数 × 1日当たりの”ゴロゴロしている確率”
となります。
さらに、「1日当たりの”ゴロゴロしている確率”」を分解し、
1日当たりの”ゴロゴロしている確率” = ゴロゴロしている累計時間 ÷ お家にいる累計時間
となります。
この 「特定の動きをしている確率 = その動きの累計時間 ÷ その動きが発生し得る状況の累計時間」 という考え方は割と重要です。
これを応用すると、
「今この瞬間、空中を飛んでいるゴルフボールの数は?」
といった問題も対処できるし、
「今この瞬間、鼻をほじっている人は?」
といった問題も対応できます。
オススメの書籍
以下の書籍は、どういった因数分解があるかを理解するのにオススメです。
『現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート』
『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』
『過去問で鍛える地頭力 外資系コンサルの面接試験問題』
『サイエンス脳のためのフェルミ推定力養成ドリル』
おわりに
紹介した計算式は、あくまで一例です。
例えば喫茶店の売上を算定する計算式なんてたくさんあります。
なので、暗記するというよりは、
あーフェルミ推定ってこんな感じなのね
と理解するためにこの記事を使っていただければと思います。
仕事本番では自由な発想で自分の頭で色々と考えてみてください!
なによりそっちの方が面白いですよ!