こんにちは!
今回は会議設計のコツについてご紹介します。
会議に関しては以前から
- グループディスカッションを例とした時の理想的な会議の進め方
- 会議の仕切り方/ファシリテーション
といった記事を公開しています。
その上で、今回は
どういう風に会議を設計したら、良い議論ができるだろうか?
と悩んでいる人向けに「会議が始まる前段階」にフォーカスしてポイントをご紹介します!
では、早速いきましょう!
はじめに
皆さんは会議に関する格言(?)として
会議は準備が8割!
という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
これは、私も(完全に)同意です。
一方で、
準備といったって、具体的に何をすれば良いんだよ・・・
と、困っている人もいるでしょう。
昔の私もそうでした。
そういった方々に向けて、今回は「会議がはじまる前」にフォーカスを当て、会議準備のポイントを説明したいと思います!
ちなみに、会議の準備という観点だと
- 議論する内容の準備
- 議論する場の準備
という二つがあります。
実際の会議設計に当たっては、この二つは同時に検討することになりますが、説明上は分けたほうが分かりやすいと思いますので、以降はこの順番に沿って説明していきます。
議論する内容の準備
まずは「議論する内容の準備」です。
過去の記事でも言及しましたが、会議の理想的な進め方は
- アジェンダ(=議題)をきちんと整理し
- アジェンダごとに今回の会議のゴールを明示し
- ゴールに到達するまでの進め方を検討・合意する
という流れになります。
つまり、会議に向けての「理想的な準備」という観点だと、
アジェンダ、ゴール、検討の進め方について、あらかじめ自分の仮説をいくつか持っておく!
もしくは叩き台を作っておく!
ということに尽きます。
尽きるのですが、実際に「アジェンダ、ゴール、検討の進め方について、あらかじめ自分の仮説をいくつか持っておく」に当たり、重要なポイントがあるので、いくつかご紹介していきたいと思います。
兎にも角にも、全体の状況と会議の出席者を確認しよう
皆さん、会議設計において一番はじめにやるべきことは何だと思いますか?
会議設計において一番はじめにやるべきことは、
- 取り組み全体の状況(+会議の位置付け)
- 会議の出席者
を確認することです。
ここがブレると、会議設計の全てが揺らいでくるからです。
まず「取り組み全体の状況」ですが、
- 取り組み全体の目的・ゴールは何で、今の進捗はどうなっているか?
- その中で今回の会議はどういう役割を持つのか?
を確認するようにしましょう。
「取り組み全体の状況」が分からないと、アジェンダ/ゴール/検討の進め方のいずれも検討できません。
例えば、今回の会議が
居酒屋の新店舗を、半年後に池袋で開店させるぞ!
今回はその1回目の会議!
ということであれば、アジェンダはどうなるでしょうか?
普通に考えると
- 「はじめまして」という参加メンバー同士の自己紹介タイムから始まり、
- これまでの推進状況の共有も必要で(「どの建物で店舗契約したか」など)、
- 今後のスケジュール感や、タスクについて議論する時間も必要
ということがわかると思います。
一方で、今回の会議が
あと1ヶ月で開店する状況!
なのに、アルバイトの確保が遅れている!
ということであれば、アジェンダは
- チームごとのタスク進捗状況をさらっと確認した上で、
- 「アルバイト確保の遅延」への解決策検討に優先的に時間投下する(決まるまで会議は終わらない)
という感じになってくるはずです。
つまり、全体の状況を踏まえると、今回の会議の「アジェンダ」や「ゴール」がある程度自動的に決まってきます。
ちなみに、アジェンダ/ゴールが決まったら、ゴールまでの「検討の進め方」もある程度自動的に決まってきます。
あと1ヶ月で開店する状況!
なのに、アルバイトの確保が遅れている!
という状況なのだとしたら、
皆でなぜこうなってしまったのか、原因を深掘ろうか
といった悠長な進め方をするわけがなく、おそらく
時間がないから、
- 本社や他店舗から人員を借りられないか問い合わせるチーム
- 人員が足りないことで開店準備にどんな影響が出るかを洗い出すチーム
- なぜこうなってしまったのか原因を深掘り、今後も同じ求人サイトを使用して良いか検討するチーム
の3チームに分かれて分担して対応に当たろう!
その上で、今回の会議では、
- 他に必要なチームはないか?
- 誰がどのチームに属し、誰がチームリーダーをするか?
を決めよう!
みたいな進め方になるはずです。
次に、「会議の出席者」ですが、
- 出席者のインプット面:出席者がどこまで前提知識を把握しているか?
- 出席者のアウトプット面:出席者の関心・スタンスは?特に反発しそうなところは?
を特に確認するようにしましょう。
まずは出席者の「前提知識」ですが、これの有無によって、主に会議の進め方のスピードが変わってきます。
例えば、
ブロックチェーン技術を活用した新規事業を3ヶ月かけて考えるぞ!
今日は第1回目の会議!
という場合、参加メンバーが
ブロックチェーンってそもそも何?
という状態なら、
- ブロックチェーン技術の概要
- 具体的なビジネスでの活用事例
といったアジェンダに時間を割く必要がありますし、
「ブロックチェーン技術の自社ビジネスへの当てはめ」までは議論できないだろう。
次回以降のアジェンダにしよう
ということになるでしょう。
逆に、ブロックチェーンの知識がある人たちが集まっていたら、もっとアジェンダを省略し、その会議のゴールもより高く設定できます。
次に出席者の「関心・スタンス」です。
出席者が特に気にするポイントがあれば、その部分の検討を厚めにする必要があります。
特に、出席者の中に反発を持っている人(持っていそうな人)がいるならば、その部分はかなり丁寧に議論を進める必要があります。
なお、参加者の個人的な性格・意見を把握できれば一番良いのですが、パーソナル情報まで獲得することは難しい場合が多いです。
その場合は、現在の役職やこれまでの経歴をベースに意見を推理することになります。
例えば、
新規事業の計画を社長にプレゼンするぞ!
という会議があった時に
- 社長は財務畑で、CFOから社長に昇格した、とか
- 社長は営業畑だが、課長時代に「全社のコスト削減プロジェクト」の現場責任者をやってた
といった情報があるならば、
社長は、新規事業の計画の中でも、
- どれだけ投資が必要か?(+投資資金をどう確保するか?)
- どれだけのコストが出そうか?
への関心が強そうだから、ここら辺の説明資料は厚くしておく必要があるな・・・
と考えることになります。
会議の俎上に載せられる「論点の数」は限られてると理解しよう
会議設計の初心者によくある誤解は
❶会議のアジェンダ
❷会議のゴール
❸ゴールへの検討の進め方
の順で検討していけば、自然と決まる!
というものです。
実際検討する際は、まずはその順番で考えて行くことになるのですが、現実問題として③から②に戻ったりすることが多いです。
なぜなら、1回の会議で処理できる「論点の数」は限られているからです。
1つの論点の議論にかかる時間は、究極的にはケースバイケースなのですが、一般論をいうと
1論点=10〜15分はかかる!
と見ておいた方が無難です。
つまり、1時間の会議で議論できる論点は、4,5個が限界になります。
なので、「会議のアジェンダ」と「会議のゴール」を設定し、それを起点に「検討の進め方」を検討していると
あー議論すべき論点がたくさんあるな・・・
1時間では処理できなさそう・・・
ということが度々発生し、
- 会議の時間を引き延ばすか
- 会議のゴールを引き下げるか
- 議論する論点を絞り込むか
を判断することになります。
ただ、いつも②「会議のゴールを引き下げる」を選択していたら、いつまで経っても検討・取り組みが終わりません。
なので、①「会議の時間を引き延ばす」か、③「議論する論点を絞り込む」を選択する必要があります。
特に③「議論する論点を絞り込む」についてはスキルが必要で、重要でない論点を選別し
この論点については、こういう理由で、こういう結論にすべきだと思いますが、良いですよね?
とサラッと進めることになります。
この「サラッと進める」を実現する上では、次にご紹介するポイントが重要になってきます。
会議のコントロールのため、叩き台の資料を作成しよう
会議には
- とりあえず関係者を呼んで、その場で議論しながら決めていく
- 誰かが叩き台の資料をあらかじめ作っておいて、それをもとに議論を進めていく
という2種類があります。
もちろん、お客さんに急に
ちょっと相談したいことがあるから打合せをさせて!
内容は込み入っているから、その場で説明するよ
と言われ、①の形で会議をしなければいけない場合などもあるでしょう。
ただ、余程のことがない限りは、「②誰かが叩き台の資料をあらかじめ作っておいて、それをもとに議論を進めていく」という形で会議を進めるようにしましょう。
理由は、
- 具体的なアウトプット案を提示した方が、よりシャープな意見をもらいやすい上に
- 論点消化のコントロールが格段にしやすい
からです。
特に「論点消化のコントロールが格段にしやすい」というのが極めて重要になります。
というのも、〆切がある中で会議を切り盛りするためには、
比較的重要でない論点についてはサラッと決めてしまい、重要な論点にフォーカスして議論をする
という進行をとる必要があるからです。
これができず、
取りうる選択肢が複数存在するならば、細かい論点も議論して決めよう!
という進行を取っていると、絶対に時間がなくなり、〆切がどんどん後ろ倒しになっていきます。
この「比較的重要でない論点についてはサラッと決めてしまう」というのが現実問題として中々難しいのですが、叩き台の資料を用意しておくと難易度がグンと下がります。
例えば、人事部の会議において、
- 新卒入社の人達の満足度調査をどう行うべきか?
- パワハラで退職者が出てしまったので、加害者の処遇をどうするか?
というアジェンダがあった場合、重要なのはどう考えても②の方です。
それなのに、
まずは「新卒入社の人達の満足度調査をどう行うべきか?」のアジェンダについて、
- 調査形式をどうするか?(アンケートにするか、インタビューにするか)
- 匿名調査にするか、記名調査にするか?
- 質問内容はどうするか?
を議論していきましょう!
とかやっていたら、時間がめちゃめちゃ掛かります。
そうではなく、事前に叩き台を用意し
まずは簡単なアンケートをやってもらい、満足度が特に低い人に対しては個別にインタビューする形にしてはどうでしょうか?
個別インタビューをするかもしれないので、調査は記名式にしましょう。
アンケートの調査票は今お配りしたもので行こうと思っています。
現時点では以上の通り考えているのですが、ご意見のある方はいらっしゃいますか?
と「叩き台に対して意見がないかを確認する」という形で進めましょう。
上記の「新卒入社の人達の満足度調査をどう行うべきか?」の例を見ていただければ分かる通り、元々は
- 調査形式をどうするか?(アンケートにするか、インタビューにするか)
- 匿名調査にするか、記名調査にするか?
- 質問内容はどうするか?
という3つの論点があったにも関わらず、
- 叩き台に対してご意見はないか?
と、叩き台を作ることで1つの論点に圧縮することができます。
これが叩き台を作る最大の効果です。
議論する場の準備
次に「議論する場の準備」です。
会議にも形式が色々ありまして、どういった形式がいいかは目的や状況に応じて変わってきます。
ただ、一番の基本的な形は、
- 真に必要な範囲で参加者を絞り、
- 誰かが叩き台の資料を作成して、それをもとに議論を進める
というものになります。
困ったらとりあえずこの形式を採用すればいいと思います。
一方で、この形式では上手くいかないシーンもありますので、そういったときは会議に工夫が必要になります。
色々なパターンがありますが、特に代表的なものをご紹介します。
イマイチ議論が盛り上がらないなら、あえて対立を煽ろう
「上手くいかないシーン」で一番頻出するのが、「意見が全く出てこない」という状況でしょう。
会議のはじめに叩き台の説明をし、
現時点ではこのように考えているのですが、いかがでしょうか?
ご意見ある人はいますか?
と聞いても「シーン」となってしまうことは、ままあります。
こういう時に有効なのは、「対立が起きるように仕込んでおく」ということです。
いくつか典型的な手法がありますのでご紹介します。
叩き台を複数作る
一番リーズナブルな手法は、「叩き台を1案ではなく、複数案作っておく」というものです。
例えば、
パワハラで退職者が出てしまいました。
今日の会議では、加害者に対する処遇をどうするか議論させてください。
というアジェンダの時に
うちの会社の前例や、他社の事例を集めてみたら、XXXXとなっていました。
これを踏まえると、減給1ヶ月が妥当と思いますが、いかがでしょう?
と聞くのではなく、
うちの会社の前例や、他社の事例を集めてみたら、XXXXとなっていました。
選択肢としては2つあって、
- うちの会社の前例に倣うなら「口頭注意」だけ
- 他社の事例に倣うなら「減給1ヶ月」
となりますが、どちらがいいと思いますか?
と問いかけるイメージです。
私はこうした方がいいと思うのですが、ご意見ありますか?
と聞かれるよりも、
叩き台として選択肢を2つ考えてきました!
どちらがいいと思いますか?
と聞かれた方が、断然意見を言いやすくなることは想像に難くないと思います。
また、どうせ叩き台を作る際は
選択肢としては2つあるな・・・
でも、XXXという理由でA案だろうな
という思考プロセスを経ることになります。
なので、叩き台としてまとめる時に、その考えた選択肢を並べるだけで完成します。
非常にリーズナブルなのでオススメです。
あらかじめ役割分担を決め、会議では演じる
「あらかじめ役割分担を決め、会議では演じる」という手法も使いやすくてオススメです。
あらかじめ会議出席者の一人とタッグを組み、賛成派/反対派などに内々に分かれて発言するイメージです。
これは経営コンサルティングの現場では割と多用されている手法です。
例えば、クライアントと経営コンサルタントが会議を行う際は、事前に
クライアントとの会議では、私は賛成の立場をとります。
なので、Aさん(上司)は反対の立場を取ってくれませんか?
いいよ〜
とコンサルタントのチーム内であらかじめ役割分担しておき、会議本番では
選択肢Aに絶対すべきです!
なぜならXXXという理由からです!
ちょっと待ってよ。
確かにメリットがあることは分かるけど、代わりにXXXという問題が発生するじゃないか。
選択肢Bの方がいいよ。
うーん・・・そのデメリットを考慮しても、選択肢Aの方がいいと思いますが・・・。
クライアントの皆さんはどう思いますか?
とクライアントに問いかける、という動きをよくやります。
この手法は色々と応用が効きます。
例えば、会議の出席者が
意見を言って、周りの人から否定されたらどうしよう・・・
と緊張感を持っているときは、若手くんがわざとピントのずれたことを言って、ファシリテーターの係長が
お!いいですね!
そう言う意見もあるよね!
他の方は意見ないですか?
と仕切ると、他の出席者が
あんなピントのズレた意見でもいいのか
と安心して、どんどん意見を出してくれるようになったりします。
感情を揺さぶり、本音を引き出す
「感情を揺さぶり、本音を引き出す」という手法も度々使います。
感情の揺さぶり方には色々選択肢があるのですが、一番使いやすいのは、「極端すぎる主張をする」というものです。
あえてアンタッチャブルな領域をガンガン攻めて、議論が巻き起こることを狙います。
ちなみにこの手法も経営コンサルがよくやる手だったりします。
例えば、
赤字に困ってるんですよね?
もうリストラするしかないでしょう!
そう簡単に「リストラ」とか言わないでくれ!
何とかリストラしないで済む方法を考えたい!
リストラに躊躇した日本の電機メーカーやメガバンが今どういう状況になってるかご存知ですよね?
リストラ以外にどんなアイデアがあるというんですか?
リストラではなく、例えばXXXとかはどうかな?
といった感じで、あえて極端な主張をして「意見が活発に出る状態」を作り出そうとします。
他にも有名な事例として、「今後の大学のあり方」を議論する文科省の有識者会議で、冨山和彦氏が
一部のトップ校を除いて、ほとんどの大学は職業訓練校になるべき!
文学部は、シェークスピアではなく、観光業で使える英語を教えろ!
経営学部は、戦略論ではなく、会計ソフトの使い方を教えろ!
工学部は、機械工学ではなく、TOYOTAが使ってる工作機械の使い方を教えろ!
と目玉が飛び出るくらい急進的な提言をしていたりします。
冨山和彦氏がどこまで本気で主張しているのかはわかりませんが、いずれにせよ「極端すぎる主張をして、議論を活発化させる」という手法が念頭にあったとは思います。
ちなみに、私は大っ嫌いな手法なのですが、「感情を揺さぶり、本音を引き出す」の手法の1つに、
人格否定などで挑発して、あえて相手を怒らせる!
というものもあります。
これはビジネスだけでなく、マスコミとかでもよく使われてますよね。
記者会見で失礼な質問をして、国民から批判が出たら、
記者は時には悪者になり、相手の本音を引き出すのだ
とか言い出すのは度々目にすると思います。
経営コンサルの例ですと、クライアントとの会議の叩き台の1ページ目に、「事業をこんな状態にするなんて、あなた達は大馬鹿です」とデカデカ書いたりする人もいます。
ただ、悪いことは言いませんので、「挑発して、あえて相手を怒らせる」はやめましょう。
理由は、言われた人との関係が決定的に悪くなるのに、その割に効果がないからです。
怒らせた結果、狙い通り相手が本音を言ってくれたらいいのですが、「売り言葉に買い言葉」という言葉があるように、ムキになって(本当は反対でないところにまで)反論してくるだけです。
つまり、相手がムキになって言って来た事=本音、とは判断できないのです。
もしくは相手がグッと歯を食いしばって、落ち着いた大人な対応(=慎重な対応)をされるだけです。
どちらにせよ、相手の「本音を引き出す」という目的は達成できていないことになります。
そんな無駄なことをするくらいだったら、前述した「極端すぎる主張をする」の方が断然効果が高いです。
くれぐれも人格否定のようなことはしないようにしましょう。
大人数の会議をする時は、平場の会議とコアメンバー会議を分けよう
会議の参集者は、必要最低限の範囲で選定することが大前提で、不必要に人数を増やすと生産性が下がります。
一般的には「7人ルール」というものがあり、
会議への参加人数が7人を超えると、1人増えるごとに生産性が10%下がる
と言われています。
ただ、現実問題として10人以上が出席する会議も度々あります。
それがシャンシャンで終わる形式的な会議だったり、ただの情報共有のための会議だったら問題はありません。
一方、「意見を言い合って検討・合意する会議」が10人以上だった場合は問題です。
ほぼほぼ機能しないと思った方がいいです。
全く意見が出ないか、もしくは意見が出すぎて紛糾します。
なので、そういう場合は、
- 会議参集者の皆が出席する「平場の会議」と
- 出席者を重要人物に絞った「コアメンバーの会議」
の2つを設定しましょう。
そして、「コアメンバーの会議」では意見を言い合って活発な議論をし、そこで結論づけたものを「平場の会議」に出してシャンシャンで終わらせるようにしましょう。
この手法を使っても、平場の会議が紛糾する時はしますが、だいぶやりやすくなるはずです。
この考え方は政治の世界でも多用されてますね。
政治家が何か政策を考える時は、
- まずは「インナー」と呼ばれる会合で議論してある程度の結論を出し
- その上で「平場」で議論する
という形で進められています。
なお、この考え方の応用ですが、元々5,6人のコアメンバーで会議をやっていたものの、その会議で対立が深刻化した場合は、さらに参加者を絞った会議を設定するパターンもあります。
例えば、対立している二人とファシリテーターの3人で開催する形もあるでしょう。
もしくは、対立している二人のうち、片方とファシリテーターが1回会議を持ち、もう片方とファシリテーターも1回会議を持つ、という形もあります(いわゆる根回し)。
当事者意識がないときの対応方針は2つ
会議で意見が出ない時でも、出席者が
意見を言いたいけど、言いづらい雰囲気だなぁ…
と思っているのであれば、これまでご紹介してきた手法で改善されるでしょう。
ただ、そもそも出席者が「当事者意識がない」ときは、もっと踏み込んだ手法が必要になります。
出席者が
この会議はテキトーにやっておくか
と思っている限りは良い会議になるわけがありません。
当事者意識を持たせる手法としては、
- 手を動かせる(タスクをさせる)
- 深刻な状況を作って尻に火をつける
の大きく2つあります。
それぞれ具体的に見ていきましょう。
手を動かせる(タスクをさせる)
当事者意識を持たせる手法の1つ目は、「出席者に手を動かしてもらう(タスクをさせる)」です。
この手法は、
この会議はテキトーにやっておくか
と、「特段理由はないけど、なんとなく当事者意識がない人」に対しては効果的です。
「なんとなく当事者意識がない」という状況が発生する理由は、シンプルに「実際、当事者でないから」という場合が大半です。
特に、
- 誰かがしっかり叩き台を作ってきてくれるし
- ファシリテーターがビシッと仕切ってくれる
という会議であればあるほど、出席者は聞いているだけの時間が多くなり、受動的な立場の人たちは増えてきます。
そういう場合の解決策もシンプルでして、タスクを与えて当事者にしてしまえば良いのです。
よくあるタスク例としては
- 説明者になってもらう
- 宿題を課してやってきてもらう
- ワークショップ形式の会議を一度はさむ
などがあります。
1つ目の「説明者になってもらう」ですが、例えば、会議出席者の中で一番偉い人に対しては
議論結果は社長に報告する必要があります!
なので、その際は課長に説明をお願いしたいと思います!
と、はじめの段階で言っておくと、急に目が覚めたように意見を出してくれるようになります。
ちなみに、時々、
説明は中堅からした方がいいよ
と説明者になることを嫌がる上司もいますが、その時も
じゃあメインの説明は私からしますが、
- はじめの「議論の背景・目的」
- 最後の「議論結果を踏まえた今後の進め方(案)」
についてだけは課長から説明してもらえませんか?
と一部分だけでも説明を担ってもらいましょう。
「会議の位置付け」や「今後の進め方」は、大所高所な話なので、偉い人も
まぁその2点は流石に私から説明した方がいいか・・・
と受け入れてくれやすいです。
2つ目の「宿題を課してやってきてもらう」ですが、例えば
カフェの売上低迷の原因は、「競合がモーニングセットを販売しているのに、うちはどの時間帯でも同じ食事メニューしか出していないこと」だと今日の会議で合意が取れました!
といった状況の時に、
次回はどういったモーニングセットを出すべきかを議論したいので、皆さん事前に考えてきてくださいね〜
会議では、一人ずつ発表してもらいます!
と仕切ってしまうイメージです。
理想は、ただ宿題を課すだけでなく、
- それを皆の前で発表してもらう
- もしくは事前に完成物を提出してもらう
という形を取る事です。
当事者意識を持たせる上では、宿題を課すだけでも一定の効果がありますが、「衆目に晒される」というステップを入れるとさらに効果があります。
3つ目の「ワークショップ形式の会議を一度はさむ」ですが、これは会議の中でタスクをやってもらうイメージです。
「宿題を課す」だと、忙しい人が対応できない場合がありますので、
前回の会議では、カフェの売上低迷の原因は、「競合がモーニングセットを販売しているのに、うちはどの時間帯でも同じ食事メニューしか出していないこと」だと今日の会議で合意が取れました!
今日はどういったモーニングセットを出すべきかを議論したいので、まずは15分時間を取りますから、各自で考えてみてください!
と会議の中でタスクを処理してもらいます。
その際は、「15分間で自由に考えて」と丸投げするよりも
まずはどの客層をターゲットにするか考えてみましょう!
より具体的に考えるため、
- お客さんの名前
- 年齢・性別
- 職業
- 家族構成
- カフェで使える金額の上限
を妄想してみてください!
5分待つので、各自で色々考えてみてください!
はい!5分経ちました!
次は、そのターゲットが朝カフェに入った時に、どういう気持ちなのかを考えてみましょう。
より具体的に考えるため、
- その人の仕事での悩みは何か?逆に楽しみは何か?
- プライベートでの悩みは何か?逆に楽しみは何か?
- そういった中で、カフェで過ごす時はどういった気持ちになっていると思うか?
を順に考えていきましょう!
こちらも5分待つので、各自で色々考えてみてください!
はい!5分経ちました!
では、ターゲットはどういったモーニングを欲しているかを5分で考えてみましょう!
これまで妄想してきたことを総動員して考えてみてくださいね!
といった感じでレクリエーション体験のように進めると、結構盛り上がります。
実際にやってみると、必ずといって良いほど「ふざけた内容」を考える人が出てきて、そして意外と「ふざけた内容」の方が示唆深かったりしますので面白いです。
例えば、
ターゲットは、先月に熟年離婚した中年のおっさんで、毎日ヤケ酒してることにしよう(笑)
痛風にも苦しんでることにしちゃおーっと!(笑)
とか、一見ふざけた設定をしたとしても、
ヤケ酒してるってことは、次の日の朝は重いものを食べる気分ではないだろうな・・・
でも痛風の薬は飲まなきゃいけないから、何かお腹に食事を入れないといけないだろうし・・・
あれ?じゃあ競合店がやっているような、「デカい小倉トースト」とかはあまり嬉しくないのかも!
と意外と検討が深まったりして、競合店との差別化に繋がったりします。
「ワークショップ形式の会議を一度はさむ」の良いところは、出席者から反発を受けにくいところです。
先にご紹介した
- 説明者になってもらう
- 宿題を課す
の場合は、出席者から「えー!やだよ!」と反発される可能性があり、気の弱いファシリテーターだと中々提案するのが難しいかもしれません。
一方、「ワークショップ形式の会議を一度はさむ」の場合は基本的に反発を受けませんし、なんなら
今日の会議はレクリエーション体験みたいで楽しかったね
みたいな雰囲気になります。
そして、以降の会議では、各自がワークショップで考えた内容が下敷きになりますので、当事者意識も醸成されます。
ぜひ活用してみていただければ幸いです。
深刻な状況を作って尻に火をつける
当事者意識を持たせる手法の2つ目は、「深刻な状況を作って尻に火をつける」です。
出席者に手を動かしてもらう(タスクをやってもらう)という手法で当事者意識を醸成できれば良いのですが、この手法は
ギリギリまで主体的に動かないぞ!
と強く思っている人には効果がないです。
宿題とかを課しても、内容がペラッペラな薄いものが提出されたりします。
こういうケースの教科書的な対処としては
なぜ頑なに主体的に動くことを拒否するのか、その理由を腹を割って聞こう!
という感じになると思いますが、現実問題としてそんなことをイチイチやってられません。
そこで、もっとプラクティカルな手法として「深刻な状況を作って尻に火をつける」という手法をご紹介します。
これは端的にいうと
会議に真面目に参加しない方が、損失が大きくなってしまうな・・・
という危機的な状況に追い込むことです。
そもそも、
ギリギリまで主体的に動かないぞ!
と思っている理由は色々考えられます。
単純にその人がこの会議に不満を持っているのかもしれないし、その人の上司が「この会議は納得していないから、うちの部門は極力関わらないように」と号令を出してるのかもしれません。
ただ、理由はどうであれ、「会議に真面目に参加しない方が、損失が大きい」という状況に追い込んでしまえば、主体的に会議に参加してくれるようになります。
具体的な方法は色々ありますが、一番簡単なやり方としては、「偉い人からメッセージを出してもらう」というものがあります。
例えば社長から
この取り組みは非常に重要なので、皆主体性を持つように!
毎回の会議の議事録はしっかり読ませてもらうし、議論に貢献していない人がいたら、その部門長に理由を問うからな!
と言ってもらったら、嫌でも皆主体的に会議に参加するようになります。
他のやり方としては、「ホラーストーリーをぶつける」というものがあります。
例えば、
居酒屋チェーンの新店舗を池袋に開店する!
その準備をどうするか皆で話し合う!
という目的の会議の際は、
ちなみに、この会議に出席してるメンバーは、開店後の半年間は新店舗で働いてもらうのでよろしく。
と言っておくと、
しっかり会議をしておかないと、開店後に苦しむのは自分じゃん・・・
と思って主体的に会議に参加してくれます。
ホラーストーリーの他の例としては、社長に対して
来年の株主総会には、厳しい指摘をするAさんが参加する見込みです。
新規事業の検討をしっかりしておかないと、来年の株主総会で火だるまになりますよ。
と伝える、というものもあります。
いずれにせよ、「深刻な状況を作って尻に火をつける」のポイントは、「真面目にやらないとその人個人に不利益がある、と分からせる」ということです。
”自分事”と捉えてもらうのが大事なのです。
なので、個人の話であることが理想で、組織や会社の話など、話の規模が大きくなるほど効果が薄くなります。
例えば、会社の新規事業を考える会議で、財務部のAさんの当事者意識がなかった時に、
このままだと会社が倒産してしまうかも!
というホラーストーリーを語っても、話の規模が大きすぎてリアリティがなく、Aさんからしたら「ふーん」くらいの感想しか持ちません。
そうではなく、
この新規事業の計画が完成したら、そのための投資資金はAさんに調達してもらいますからね
というと、
新規事業の内容が詰まっている方が、銀行とかへの説明もしやすいだろうし、お金の調達が楽になるだろうなぁ
つまり、自分の将来の仕事が楽になるなるなぁ
と考え、主体的に会議に参加してもらえるようになります。
たくさんのアイデアが欲しいなら、ブレストに工夫を
会議をやっていると、「意見を拡散させる」フェーズが必要になることが多いです。
その場合はブレインストーミング(ブレスト)をすればいいんですが、工夫を入れる事でより良い会議になります。
まず、ブレストこそ少人数でやるべきです。
大人数でやったら一人当たりの発言量が減りますし、その場の雰囲気でアイデア出しの方向性が(なんとなく)決まってしまうことがあります。
なので、ブレストをやる際は、3人くらいの小グループに分けてやった方が、結果的に様々な意見が出ます。
次に、ブレストをする際は「仕掛け人」を作っておいた方がいいです。
いくら「自由に発想していい」と言われても、会議出席者は
「突飛な意見を言え」と言われても、躊躇っちゃうな〜
と、心理的ブレーキを絶対持っています。
なので、ブレストをするグループごとに「仕掛け人」を紛れ込ませ、率先して突飛なことを言ってもらうようにする、という手があります。
なお、これをやる場合は、仕掛け人だけを集めた会議をあらかじめ開き、一度同じテーマでブレストをやってもらって準備しておいた方がいいです(それが無理ならせめて事前にテーマを共有しておく)。
また、「ブレストを宿題にしておく」という手もあります。
例えば、新規事業のアイデアをたくさん出したいのであれば、会議に集めてその場で考えてもらうよりも、
- 新規事業名
- 狙う顧客ニーズ
- 自社の提供サービス
- 競合に比べ何が新しいか
- 既存事業の何のリソースを活用できるか
といった枠だけを並べた「新規事業のアイデアテンプレート(スライド1枚)」を作成しておき、
次回の会議まで、一人2枚は作成してきてくださいね!
と仕切るイメージです。
他にも、「ブレストとワークショップを組み合わせる」といった手もあるでしょうし、色々と工夫してみることをオススメします!
その他のよくある手段
会議設計において、その他のよくある手段をご紹介します。
議論に集中させるには缶詰にするしかない
会議出席者は意欲を持っているものの、皆忙しい身なので議論が深まらない・・・
といったときは、もう缶詰にするしか方法はありません。
お金がある場合は、「合宿」という名目で場所も変えて1日丸ごと議論と個人作業を繰り返すといいでしょう。
ただ、「合宿」が難しい場合、
次回の会議は、隣の建物のカフェでやりますか
とするだけでも効果はあります。
より”熱”を持たせたいなら、「非日常感」を演出
皆しっかり会議に参加してくれてるけど、なんか”熱っぽさ”がないんだよなぁ
といったときは、「非日常感」を会議の中で演出しましょう。
この会議は、普通の会議とはちょっと違うぞ!
と思ってもらえたら、自然と会議への思い入れが強くなります。
よくあるのが「会議に特別ゲストを迎える」というパターンです。
大学教授などの権威者を呼ぶ手もありますが、一番のオススメは「ターゲットの客層」の人を呼ぶことです。
ターゲットの客層に近い社内の人をゲストとして招き、その人にワークをしてもらったり、インタビューをするイメージです。
例えば、
居酒屋チェーンの新店舗を池袋に開店する!
というときは、池袋でよく飲んでる社内の人を連れてきて
お手元の紙に、池袋で”一人飲み”をするときの鉄板ルートを書き出してください!
「まずは焼き鳥屋でビールを中心に1時間ほど飲む!その後は立ち飲み屋で1時間ほどチビチビ飲む!」みたいな感じで。
とお願いします。
そして、その書き出された紙をベースにさらに深堀りのインタビューをやっていく感じです。
ここら辺はインタビューの記事が参考になると思います。
非日常感を演出する手段としては、ほかにも前述したワークショップを積極的にやるという手もあるでしょう。
会議設計者の方は、クリエイティビティを発揮して、色々試してみてください!
究極のコツ:会議が始まる前に、会議の議事メモを”妄想”で書くべし
これまで、
- 議論する内容の準備
- 議論する場の準備
について、それぞれのコツをご紹介してきました。
その上で、究極的な会議設計のコツをご紹介します。
それは、「会議が始まる前に、会議の議事メモを”妄想”で書くべし」というものです。
“妄想議事メモ”を作って、
- 議論する内容の準備
- 議論する場の準備
が十分かを検算するのです。
まず、会議の目的・論点が整理されたら、自動的に会議資料として持っていくべき内容は決まってきますし、出席してもらわないといけない人達も決まってきます。
例えば、
A店の売上が減少している理由と対策を議論しよう!
という会議の場合は、
- 本当にA店の売上が下がっているのか、
- A店以外は下がってないのか
といったことが分かるようなデータをまずは示さないと、検討が進まないことは分かると思います。
出席者についても、
- A店の責任者
- 各店舗の売上を横串で管理している部門の者
- A店の立て直し等をするかどうかを決定できる経営層
などがいればベターということは自動的に分かってきます。
これらは会議の目的・論点から論理的に導き出されるものですが、ここに”妄想で書いた議事メモ”の要素を塗していくのです。
つまり、
- 現実的には出席者はどんな人なのか
- その人たちはどんな反応を示しそうなのか
- 結果、議論がまとまるのにどのくらいの時間が必要なのか
といった点を“妄想”で考えて、会議の前に議事メモを簡単に作成してみるのです。
特に「出席者たちはどんな反応を示しそうなのか?」が非常に重要で、ここを考えることで事前に準備しなければいけない事が明確になってきます。
一般的には以下の観点が示唆に繋がりやすいことが多い印象です。
- 出席者は、このテーマについてどこまで知ってるのか、知ってないのか
- あまり知らないなら、会議資料でそこをカバーする必要
- 出席者は議論に積極的なのか、消極的なのか
- 消極的なら、事前に上長から「真剣に取り組むように」とお尻を叩いてもらう等の対策が必要
- 「私たちには決める権限がないしなぁ」ということであれば、決定権限者への諮り方も論点になる
- 出席者はどんなポイントを気にするのか(どんな情報を欲しがり、逆に嫌がるのか)
- 例:財務部はいかに元手が必要なのかを気にするので、会議資料に必要資金の試算を入れておく必要
- 例:経営層は現場の細かい話をダラダラされるのを嫌がるので、サマリを作ってそれで議論するようにする
- 素直に考えると出席者は賛成/反対なのか
- 反対なら、どうすれば賛成に回ってくれそうか
会議の目的・論点から論理的に導き出される会議準備(会議資料/場の設定)に、”妄想で書いた議事メモ”の要素をまぶしていく、という考え方は非常に重要なので、ぜひご活用ください
オススメの書籍
今回の記事に関連したオススメの書籍は以下の通りです。
『「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術』
おわりに
いかがでしたでしょうか?
お仕事の参考になれば幸いです!