こんにちは!
今回は、前回ご紹介した「論点」のデザインの仕方についてご紹介します!
「論点とは何か?」や、論点設計の典型的パターンについては前回記事でご紹介しましたが、今回の記事は
自分自身で、オーダーメイドで論点設計できるようになる!
という状態を目指す人向けのものです。
ぜひご参考にしていただければ幸いです!
では、早速いきましょう!
今回の前提と注意点
今回の記事は論点設計のやり方をご紹介するものであり、「論点を立ててから解を考える」という検討の流れを前提に置いています。
にもかかわらず、いきなり出鼻を挫く形になってしまって恐縮ですが、「常に論点設計から始めなければいけない」というわけではない、という点はご注意ください。
つまり、論点を立ててから解を考えるパターン以外にも、解の仮説を立ててから論点を立てるパターンがある、ということです。
「論点を立ててから解を考えるパターン」は前回記事でご紹介したとおりですが、「解の仮説を立ててから論点を立てるパターン」については
うちのカフェの売上がここ数ヶ月低迷しているなぁ…
業績回復のため、キャンペーンをやったらどうだろうか!?
と、 “最終的な結論の仮説”をまず作り、それを検証する論点を整理するイメージです。
では、なぜ今回の記事では「論点を立ててから解を考えるパターン」を前提に置いているかというと、
解の仮説を立ててから論点を立てるパターンは、論点を立ててから解を考えるパターンができるようになれば自然とできるようになる!
と私が考えているからです。
私自身、仕事では「解の仮説を立ててから論点を立てるパターン」も多用しています。
論点を立てようと思っても上手くいかないなら、解の仮説をまずは考える場合も多いです。
ただ、そのケースであっても、
解の仮説から上手く問いを立てられるかは、「論点を立ててから解を考えるパターン」をどれだけ理解しているかに依るなぁ
と感じることが多いです。
以上の通り、今回の記事では「論点を立ててから解を考えるパターン」を前提にしていますが、
- 「解の仮説を立ててから論点を立てるパターン」もあること
- どっちが正解というわけではなく、状況によって使い分けることが重要であること
はご理解いただければ幸いです。
では前置きはこのくらいにして、論点設計のやり方について早速見ていきましょう!
論点設計の基礎的な考え方
論点の立て方としては、数学の「誘導問題」の考え方を踏襲し、
「”最終的な問い”を解くためには、前提として何の問いを解かなければいけないか?」
と、“最終的な問い”から逆算してブレイクダウンすることが基本になります。
そして、立てた問いごとに
「さらにブレイクダウンする必要はないか?」
と考え、必要であれば”より小さい論点”に切り分けていきます。
この考えに沿って問いを1つ1つ洗い出し、各論点間の関係性を整理して“問いの集合体(束)”を作るのが論点設計です。
論点設計の具体例としては前回の記事をご参照にしていただければ幸いです。
ここで、“問いの束”の形として2つのパターンがあることを覚えておきましょう!
- 先後関係が存在する「タテの論点」
- 先後関係が存在しない「ヨコの論点」
の2つです。
それぞれ見ていきましょう。
先後関係が存在する「タテの論点」
タテの論点のイメージとしては、前回の記事でご紹介したような、
患者にどのような対処をすればいいか?
- 問題はどこにあるか?患者はどういった人で、どこを痛がっているか?
- 論点①の「問題」の原因は何か?なぜそこが痛いのか?
- 論点②の「原因」を取り除くため、具体的に何をしたらいいか?
などが典型です。
最終的な問いである「患者にどのような対処をすればいいか?」から逆算して問いがブレイクダウンされ、①-③の小論点が並ぶ形になっています。
①-③の小論点を解いていけば、最終的な問いが自然と解ける構成です。
タテの論点では、小論点はインプット/アウトプット関係で並んでおり、
論点②の検討結果が、論点③を検討するためのインプットになる!
という関係になっています。
このため、タテの論点における小論点の間には、「①、②、③の順番で解いていかないと、最終的な論点に到達しない」という先後関係が存在しています。
先後関係が存在しない「ヨコの論点」
一方、ヨコの論点のイメージとしては、
医療業界はどういった状況か?開業医を目指している自分にとって有利か/不利か?
- P:開業医を取り巻く政策/法規制はどう変遷しており、今後どう変化していくと考えられるか?
- E:開業医の経済性はどうなっているか?開業医特有の事業特性としてどういったものがあり、結果として収益推移/利益率はどの程度になっているか?
- S:社会や市民にどういった変化が生じており、それらは医療現場/病院経営にどういった影響をもたらしているか?
- T:新テクノロジーが開業医の病院に導入されている事例としてどういったものがあるか?それらは効果が出ているか、もしくは副作用が出ているか?
などが典型です。
最終的な問いである「医療業界はどういった状況か?開業医を目指している自分にとって有利か/不利か?」から逆算して問いがブレイクダウンされ、小論点①-④が並んでいます。
ただ、この小論点は並列となっており、どの小論点から解いていっても不都合は生じません。
ちなみに上記はPESTと呼ばれるフレームワークを論点形式で記載したものになります。
重要度は「タテ > ヨコ」
以上の通り、論点設計には「タテ」と「ヨコ」があります。
どちらが大事かというと、「タテの論点」の方が断然大事です。
なぜなら、
- 「ヨコの論点」は“同次元での問いの集合”なのに対して、
- 「タテの論点」は次元の異なる問いが並ぶ
からです。
もっと具体的にいうと、「タテの論点」は、“最終的な問い”から逆算した中間ステップが小論点として並んでいます。
一方で「ヨコの論点」は、“同じステップ内”の観点別の小論点が並んでいます。
つまり、
- “最終的な問い”に向けた大枠(ステップ)が「タテの論点」でデザインされていている
- その中の一ステップではブレイクダウンのため「ヨコの論点」が採用される場合もある
という関係になっているのです。
幹を構成する「タテの論点」の方が、枝葉の「ヨコの論点」よりも大事なのはご理解いただけましたでしょうか。
個別論点の分類
これまで“問いの束”というマクロの観点から論点設計を考えてきましたので、次はミクロの観点から論点設計を考えてみましょう。
つまり、構成要素となる個別論点に関してです。
個別論点については、究極的にはその場その場に応じて適切な問いをオーダーメイドで設定していただくしかないのですが、その際は「個別論点の分類」を理解しておくと便利です。
ゼロベースで個別論点を考えるよりも、
個別論点の分類としてAとBがあるけれど、今回はどれが適しているかな?
とした方が”取っ掛かり”があって考えやすいからです。
では、いくつか分類を見ていきましょう。
内容を問う論点か? vs タスクとしての論点か?
個別論点の分類として、まず把握しておかなければいけないのは、
内容を問う論点か? vs タスクとしての論点か?
の分岐になります。
内容を問う論点はわかりやすいですね。
- 婚活市場の市場規模はどの程度か?伸びているのか、縮小しているのか?
- 顧客は自社の婚活サポートサービスのどういった点に満足しており、どういった点に不満を感じているか?
などです。
一方、タスクとしての論点は、
- 婚活市場の市場規模をどうやって調査するか?
- 他社の婚活サポートサービスを覆面調査すると、どういった気づきが得られるか?
などが該当します。
タスクとしての論点は「作業のやり方」や「この作業をやるとどうなる?」といった点を問うのに対し、
内容を問う論点は「結論として出したい中身」を問うことになります。
「内容を問う論点」と「タスクとしての論点」は、どちらが良いと一概に言えるわけではなく、ケースバイケースで使い分ける必要があります。
むしろ論点設計の内訳が、内容を問う論点/タスクとしての論点のいずれかに偏っている場合は、その論点設計があまり上手くいっていないと考えた方がいいです。
良い論点設計では、内容を問う論点/タスクとしての論点がバランスよく組み込まれています。
例えば、前回の記事でご紹介したような、
患者にどのような対処をすればいいか?
- 問題はどこにあるか?患者はどういった人で、どこを痛がっているか?
- 論点①の「問題」の原因は何か?なぜそこが痛いのか?
- 論点②の「原因」を取り除くため、具体的に何をしたらいいか?
という論点設計を見てみましょう。
①②③と小論点が並んでいますが、実際に検討する際は①②③ごとにさらにブレイクダウンされた論点を設定して検討していくことになります。
この更なるブレイクダウンの際、論点②「問題の原因は何か?なぜそこが痛いのか?」という論点は一番重要な問いなので、
太り過ぎによる痛風で足の指が痛くなっているのでは?
太り過ぎを気にして最近ダイエットのためにランニングしているので、足の指が疲労骨折しているのでは?
といった感じでピンポイントで”原因仮説”のクローズドクエスチョンを設定する形でブレイクダウンし、検証していくことが多いです。
一方、論点③「原因を取り除くため、具体的に何をしたらいいか?」という論点は、当然ですが、原因が特定されてはじめて本格的な検討を開始できる問いです。
つまり、「原因を問う小論点②」の結論が出るまでは、論点③「原因を取り除くため、具体的に何をしたらいいか?」という問いをさらにブレイクダウンしようにも、「内容を問う論点」を用いることはできないので、
- ③原因を取り除くため、具体的に何をしたらいいか?
- ③-1:原因を取り除く打ち手候補を洗い出すとどうなるか?
- ③-2:打ち手候補を絞り込むに当たり、どういった評価軸が考えられるか?
といった感じで、タスクとしての論点しか設定できないことになります。
逆にいうと、前工程が終わらないと検討できない論点のはずなのに、その下に「内容を問う論点」がいくつも紐づいている場合は、
ちょっとおかしくないか?
検討で時間をかける場所を間違えているのでは?
といった感じで気づきを得ることもできます。
「内容を問う論点」と「タスクとしての問い」はバランスよく整合的に配置されていないといけない、という点は忘れないようにしましょう。
ファクトを問う論点か? vs 判断を問う論点か?
個別論点の分類として次に把握しておかなければいけないは、「内容を問う論点」の更なる内訳です。
「内容を問う論点」は、
ファクトを問う論点か? vs 判断を問う論点か?
に分かれますので、この分岐を理解しておく必要があります。
ファクトを問う論点はわかりやすいですね。
うちのカフェの客は、男性が多いか女性が多いか?
などが具体例です。
一方、判断を問う論点は、
うちのカフェのメインターゲットは、男性にすべきか女性にすべきか?
などが具体例になります。
問われる「判断」として主なものは、
- ベクトルやトレンド
- ベクトルの例:市場規模は伸びているか?
- トレンドの例:最近ヒットしている商品にはどういった傾向があるか?
- 良し悪しや優先順位
- 良し悪しの例:現在の状況は自社にとって有利か不利か?
- 優先順位の例:どの投資案件に優先して資金投入すべきか?
- 定義や要件
- 定義の例:ペット業界はどのようにセグメンテーションできるか?(市場の定義)
- 要件の例:戦略を実行する上でどういった組織にすべきか?組織要件は何か?(戦略から逆算して組織要件が洗い出される)
などです。
ファクトを問う論点と違い、判断を問う論点は”解釈”などが必要になってくるため、解く難易度が高くなる傾向があります。
ここで、「ファクトを問う論点か? vs 判断を問う論点か?」で重要となる考え方をご紹介します。
それは、「ファクトを問う論点」をいくら解いても、「判断を問う論点」に対して結論を出せない、というものです。
時々、
うちのカフェは、どういった新商品を出すべきか?
という「判断を問う論点」をブレイクダウンし、
- うちのカフェは、どういった新商品を出すべきか?(判断を問う論点)
- お客様から要望の多いメニューは何か?(ファクトを問う論点)
- 競合のカフェはどういった新商品を出しているか?(ファクトを問う論点)
- ウチの歴代の新商品は、どういったものがあるか?(ファクトを問う論点)
と小論点を設計する人がいますが、これは上手くいきません。
なぜなら、「判断を問う論点」の結論を出したいなら、ブレイクダウンした小論点の中にも「判断を問う論点」が含まれていないとおかしいからです。
この場合は、
- うちのカフェは、どういった新商品を出すべきか?(判断を問う論点)
- お客様から要望の多いメニューは何か?そのうち我々にも提供できそうなメニュー候補はどれか?(ファクト+判断を問う論点)
- 競合のカフェはどういった新商品を出しているか?競合の動きを踏まえると、ウチも提供すべき/ウチは避けるべきメニューはあるか?(ファクト+判断を問う論点)
- ウチの歴代の新商品は、どういったものがあるか?そのうち今回も再提供できそうなメニューはどれか?(ファクト+判断を問う論点)
と小論点の全てに”判断”の要素を追加するか、もしくは
- うちのカフェは、どういった新商品を出すべきか?(判断を問う論点)
- ①新商品を取り巻く状況を整理するとどうなるか?(ファクトを問う論点)
- お客様から要望の多いメニューは何か?(ファクトを問う論点)
- 競合のカフェはどういった新商品を出しているか?(ファクトを問う論点)
- ウチの歴代の新商品は、どういったものがあるか?(ファクトを問う論点)
- ② ①で整理されたファクトを踏まえると、お客様からのニーズも高く、競合の商品と比べられても見劣りせず、提供難易度も高くないメニューは何か?(判断を問う論点)
- ①新商品を取り巻く状況を整理するとどうなるか?(ファクトを問う論点)
と、小論点の内訳に「判断を問う論点」に追加して論点設計し直すか、のいずれかが必要になります。
特に論点設計が必要になるような”最終的に解きたい論点”は、基本的に「判断を問う論点」であることが多いと思いますので、そういった場合は
小論点の大きな幹に1つ以上の「判断を問う論点」がないと、”最終的に解きたい論点”の結論は出せないなぁ…
と考えるようにしましょう。
以上、個別論点の考え方を具体的に見てきましたが、前述の通り、論点設計は最終的には“問いの束”の形で作り込むことになります。
このため論点設計の良し悪しは、問い一つ一つで評価されるものでなく、あくまで束全体で評価すべきです。
この視点はブレずに持ち続け、「木を見て森を見ず」ならぬ「個別論点を見て、問いの束全体を見ず」にならないように気をつけましょう。
実務上の論点設計のプロセス
これまで
- 論点設計では、「”最終的な問い”を解くためには、前提として何の問いを解かなければいけないか?」と考え、”最終的な問い”から逆算してブレイクダウンする
- その上で、「より小さな問いにブレイクダウンする必要はないか?」と立てた問いごとに精査する
- “問いの集合体(束)”の形式には、「タテ」と「ヨコ」の2種類が存在する
- 個別の問いには、ファクトを問う論点、判断を問う論点、タスクとしての論点の3種類が主に存在する
といった点をご紹介してきました。
あとは前回ご紹介した「論点設計の典型的パターン」などを参考にして、その場その場で最適な論点設計をしていただければいいのですが、いざ実務で活用する際にポイントとなる点がいくつかありますのでご紹介します。
そのポイントとは、
- 実務上一番難しいのは「問いの”粒度”をどうするか?」
- 問いの”書き振り”を柔軟に変更できると、自分の思考も柔軟になっていく
の2点です。
では、それぞれ見ていきましょう。
実務上一番難しいのは「問いの”粒度”をどうするか?」
論点設計をする上で判断が一番難しいのは、
どういう粒度感で問いを作るか?
という観点です。
というのも、問いの”粒度”によって検討の難易度が大幅に変わるからです。
一般論で言うと、問いには丁度いい抽象度/具体度のゾーンがあります。
“抽象的すぎても、具体的すぎても、あまり良くない” ということです。
まず、抽象的な問いだと、検討が難航します。
例えば、あなたが
自分のラーメン屋を今後どのように経営して行こうかなぁ?
近くの大学のアメフト部がよくウチの店に来てくれるけど、もっと喜んでもらいたいな
と考えている場合、
- 素晴らしいラーメン屋とは何か?
といった(もはや哲学の領域に足を踏み入れている)超抽象的な問いを立てても、解を出すのに難航しそうじゃありませんか?
こういう場合は
- 近くの大学のアメフト部は、具体的にどこのラーメン屋に通っているか?
それらのラーメン屋のどういったところに満足しているか?
といった、もっと解像度の高い問いを立てた方が解を出しやすいのは容易に想像がつくと思います。
シャープな問いを作れれば、シャープな解が出てくるということです。
一方で、問いの具体度をただ上げれば良いかというと、そうではありません。
例えば上記のラーメン屋のケースで、
- 近くの大学における部活/サークル別の所属人員数は?男女比は?
といった問いを立てたらどうでしょうか?
問い自体は具体的ですが、「自分のラーメン屋を今後どのように経営していくか?」という”最終的な論点”にどう繋がっているか分かりづらいですよね。
いきなりここまで論点の解像度を上げるのではなく、
- ウチのラーメン屋の将来的なメインターゲットは、アメフト部にすべきか、それとも他の大学生にすべきか?
といった粒度感の問いを間に挟んだ方が、「自分のラーメン屋を今後どのように経営していくか?」という”最終的な論点”との繋がりが分かりやすいと思います。
具体的すぎる論点だと、場合によっては”最終的な問い”との繋がりが見えづらくなります。
その結果、
この個別論点って、何のために解くんだっけ?
と迷子になる時もある、ということです。
このように問いには丁度いい抽象度/具体度のゾーンがあるのですが、論点設計をする際にそのゾーンの問いがポンポン出てくるなんてことはほぼありません。
丁度いい粒度感の問いを作るためには、その方法論を持っておく必要があります。
私がオススメする”ちょうどいい粒度感”を探る方法は、
まずは一つの論点を捻り出し、そこを起点に抽象度を上げてみたり、具体度を上げてみたりする!
というものです。
これは
- 抽象度が高い論点を起点に、解像度を高めていくやり方
- 個別具体な論点を起点に、問いを高次元化していくやり方
の2方向があります。
それぞれ見ていきましょう。
抽象度が高い論点を起点に、解像度を高めていくやり方
まず、抽象度が高い論点を起点に、解像度を高めていくやり方です。
これは、「抽象度が高い論点をとりあえず何個か考えた上で、数字、固有名詞、修飾語などの具体的な文言に差し替えたり追加して、解像度を上げていく」というのが基本です。
特に、具体的な文言に差し替えたり追加する際は、
- 一段階層を掘り下げて、今の要素を分解する
- 「思考」ではなく「実際の行動」を問う形に変換する
- 「結果/結論」ではなく、「why」にフォーカスする
という観点が解像度を上げる上でのポイントになりやすいので、基本技として覚えておくのをオススメします。
先のラーメン屋の例でいうと、
- 素晴らしいラーメン屋とは何か?
という問いをまずは捻り出します。
その上でこの問いを起点にして
んー、「素晴らしい」とは誰にとってのものなのかを追記したら、もっと具体的になるかな?
と考え、
- 近くの大学のアメフト部にとって、素晴らしいラーメン屋とは何か?
と少し解像度を上げます。そして、
んー、もっと具体的にできないかな…?
「頭の中で考えていること」を問いにするのではなく、「実際に行動に移していること」を問いにするのはどうだろうか?
と考え、
- 近くの大学のアメフト部が「素晴らしい」と考え、実際に通っているラーメン屋は?
と更に解像度を少し上げます。さらに、
もう少しだけ具体度を上げたいな…
「素晴らしい」って文言を使っている限り、どうしても抽象的に見えちゃうかも。
「素晴らしい」と感じている”理由”の部分にフォーカスすることで、問いの解像度を上げられないかな?
と考え、
- 近くの大学のアメフト部は、具体的にどこのラーメン屋に通っているか?それらのラーメン屋のどういったところに満足しているか?
と更に解像度を少し上げるイメージです。
なお、この「具体的な文言に差し替えたり追加したりして解像度を上げる」という手法は非常に自由度が高いので、はじめてやる時は少し戸惑ってしまうかもしれません。
そういう方々のため、参考として典型的な“シャープな問い”のパターンをいくつかご紹介します。
私が特に使いやすいと感じているパターンを抽出していますので、MECE感はないかもしれませんが、実務経験に根ざすものとしてご容赦いただければ幸いです。
パターン1:検討範囲が狭められている、ないしは検討時の条件が明示されている
典型的な“シャープな問い”のパターンの1つ目は、「検討範囲が狭められている、ないしは検討時の条件が明示されている」というパターンです。
具体例をいくつか見ていきましょう。
<具体例>
×政治的観点から見ると、開業医を取り巻く環境はどうなっているか?
○開業医を取り巻く政策/法規制はどう変遷しており、今後どう変化していくと考えられるか?
上記の「マルの論点」は、”ヨコの論点”の例示であるPESTの論点の1つ目ですね。
バツの論点では、「政治的観点」とか「環境はどうなっているか」とか曖昧な文言が並んでいますが、
- 「政治的観点」は、「政策/法規制」という形で構成要素に分解
- 「環境はどうなっているか」は、「(これまで)どう変遷しており、今後どう変化していくと考えられるか」といった形で従来/今後という切り口で分解
といった感じで変更されており、検討範囲がシャープに規定され直されています。
このように、「曖昧な文言を分解する」のは、シャープな問いを作る基本ですので、ぜひ習得いただければ幸いです。
<具体例>
×コロナ禍前のような好景気は、今後3年間で起きるか?
○今後3年間の事業計画を立てる上で、コロナ禍前のような好景気が再び起きることを想定すべきか?
「今後起きるか?」というシンプルな将来予測の問いを検討するのは非常に難しいです。
このため、「起きるかどうか」という“現象の将来予測”の問いではなく、「今後起きることを想定しておくべきか?」という”自分達が取るべきスタンス・行動”の問いに変換しています。
検討の範囲がグッと狭まっていることを感じていただければ幸いです。
<具体例>
×どういった状態になったら事業撤退すべきか?
○どういった条件が揃ったら事業撤退の検討を開始すべきか?
事業の特性によって“撤退基準”には差があるはずで、これを全事業で統一的に運用するのは難しい場合が多いです。
このため、“撤退基準”そのものではなく、“事業撤退を検討し出すトリガー”に絞って問いを立てています。
事業撤退の検討のトリガーは全事業で統一するけど、実際に撤退するかどうかは各事業の個別事情を踏まえて判断する!
というイメージです。
これも検討の範囲がグッと狭まってますね。
<具体例>
×売上減少にはどのように対応すべきか?
○「値上げ」という選択肢が取れない中で、売上減少にはどのように対応すべきか?
解の選択肢として取り得ないものをはじめから除外して問いを立てています。
例えば
- 電気代
- 薬価
などは価格に対して政府が一定の規制を設けているので、「値上げ」という選択肢を簡単には取れない場合も度々あります。
そういった検討の条件を問いの中で明示し、検討の範囲を狭めています。
<具体例>
×コスト削減を断行するにはどうすべきか?
○従業員満足度を一定担保しつつも、コスト削減を断行するにはどうすべきか?
前者の問いだと「とにかくコスト削減をすれば良い」という形になります。
倒産寸前のケースではこういった問いでも良いでしょう。
一方、大抵の場合はただコスト削減をすれば良いわけではなく、事業運営の継続性(=従業員満足度)と天秤にかけて“いかにバランスを取るか”が重要であることが多いので、その点を強調しています。
こういった検討する上での必須条件がある場合は、問いに組み込んでおいた方がいいですね。
<具体例>
×競合他社が採用している人事制度はどうなっているか?
○職場満足度を上げるために競合他社が採用している人事制度は?
前者の問いだと人事制度全般を調査対象にしていますが、後者の問いでは「職場満足度を上げる」という目的に適った人事制度に絞って調査する形になっています。
こういった“目的”を修飾語的に問いに付加するのは、簡単な上にシャープさを上げられるのでオススメです。
<具体例>
×優秀な人材の特徴は何か?それを獲得するため採用基準をどうすべきか?
○ダメな人材の特徴は何か?それを避けるためには採用基準をどうすべきか?
前者は「優秀な人材の特徴」を問うている一方、後者は「ダメな人材の特徴」を問うています。
この問いの変換の前提には、
”優秀な人材”にはたくさんのバリエーションがあって一般化できないし、もし一般化すると人材の多様性が損なわれる恐れもある。
それよりは「絶対ダメな人材」を定義し、それに該当してさえいなければOKとした方がいい。
どうせ百発百中なんてできないのだから、我々にできるのは「絶対にダメ」という人材を減らし、「優秀な可能性がある」という人材を増やし、全体の成功確率を底上げすることだ。
という考え方があります。
つまりこの変換は
成功するパターンはたくさんあるから、一概に「これが正解!」なんてできない。
典型的な失敗パターンを避けて、あとは「数打ちゃ当たる」の精神でやるしかない。
という場面であれば応用が効きます。
上記では人材がテーマですが、例えば
- 起業のアイデア
- エンタメのネタ(映画、漫才など)
といったものにも使えますね。
パターン2:どのような分析軸/タスクで解を導出するかが練り込まれている
典型的な“シャープな問い”のパターンの2つ目は、「どのような分析軸/タスクで解を導出するかが練り込まれている」というパターンです。
具体例を見ていきましょう。
<具体例>
×開業医の経済性はどうなっているか?
○開業医の経済性はどうなっているか?開業医特有の事業特性としてどういったものがあり、結果として収益推移/利益率はどの程度になっているか?
上記の「マルの論点」は、”ヨコの論点”の例示であるPESTの論点の2つ目ですね。
ただ単に
- 開業医の経済性はどうなっているか?
という論点を立てても曖昧なので、
- 開業医の経済性はどうなっているか?開業医特有の事業特性としてどういったものがあり、結果として収益推移/利益率はどの程度になっているか?
と後ろに”より具体的な問い”を追記し、
今回検討したい「経済性」の構成要素は、「事業特性」と「結果数字(収益推移/利益率)」の2点だ
ということを明示しています。
もしあなたが
開業医の経済性を分析しといて〜
と上司から言われた場合でも、「経済性」の構成要素としては
- 事業特性
- 結果数字(収益推移/利益率)
の2つがメインだと分かれば、この後の分析もやりやすくなると思いませんか?
問いの書き方次第で、その後の分析作業などがスムーズになることを感じていただければ幸いです。
<具体例>
×スカイツリーと東京タワーの入居テナントは、どちらが充実しているか?
○スカイツリーと東京タワーの入居テナントを比較すると、どこが共通でどこに差異があるのか?
前者は「どちらが充実しているか?」という抽象的な問いになっていますね。
もしあなたが上司から「この問いを解いて!」と渡されても、
充実度なんてどうやって調べたらいいのだろう…
と頭を抱えてしまうのではないでしょうか?
ですが、後者の「比較すると、どこが共通でどこに差異があるのか?」という問いの形であれば、
あー、スカイツリー、東京タワーそれぞれのテナントのジャンル・数とかを比較すればいいのね!
と、どのような分析を使って解を出していくのかが分かりやすいと思います。
前者から後者に変換したことで検討が進めやすくなっていることを感じていただければ幸いです。
<具体例>
×従業員のモチベーションを高く維持するため担保すべきことは?
○従業員のモチベーションを高く維持している事例は?それらの事例では何が要諦となったか?
前者の問いだと、頭に「従業員のモチベーションを高く維持するため」とあって解像度は少し上がっているのでこの問いでも絶対ダメというわけではないと思いますが、「担保すべきことは?」部分がどうしても抽象的なものになっていますね。
そういう場合は、「担保すべきこと」から「事例+その要諦」に変更することで、検討のポイントが絞り込まれ、この後の調査・検討がスムーズに進みます。
このように、
どうせ事例調査するんでしょ?
と具体的なタスクが分かっているときは、論点時点でそれを明示した方が検討がしやすいです。
<具体例>
×報告されたアプリの不具合に、どのような順番で対応していくべきか?
○報告されたアプリの不具合を、深刻度×影響ユーザー数で分類すると、どのようにグルーピングできるか?
前者は「どのような順番で対応していくべきか?」というプロセス論に関する問いであるのに対して、後者は「〜で分類するとどうなる?」という“一定のプロセスの結果”を問う論点になっています。
色んなやり方があってどれが良いかわからないときは、「どのような順番で対応していくべきか?」というプロセス論の問いを立ててもいいでしょうが、
まぁこういったやり方が素直だよね
といったやり方が経験上分かっているケースであれば、それを前提とした問いにしてしまった方が効率的です。
なお、後者の問いの後工程ですが、当然、深刻度/影響ユーザー数がともに大きいグループから対応していくことになります。
<具体例>
×我が市が財政破綻した場合、どのようなことが起きると考えられるか?
○財政破綻した自治体の顛末を踏まえると、我が市が破綻した際、行政サービスはどこまで低下すると考えられるか?
前者はかなりザックリした問いですが、後者の問いは
あー、破綻した夕張市とかの事例を調査してみて、それを我が市に当てはめてみればいいのね
とすぐに分かる問いになっていると思います。
何かを検討する際に事例調査を行うことは結構多いので、その場合ははじめから事例調査する前提の問いの書き振りにした方がいいでしょう。
<具体例>
×購入者の属性によって製品ニーズはどう変化するか?
○購入者の属性(特に年収、居住エリア、世帯構成)によって製品ニーズはどう変化するか?
前者は「購入者の属性」という抽象的な文言を使ってますが、後者はその具体例を記載していますね。
このように”優先すべき観点”を明示できると、検討の際は
時間がほとんどないから、とりあえず最優先の「年収」「居住エリア」「世帯構成」との製品ニーズの関係性だけ調べよう!
他の観点は時間が捻出できたらやるようにしよう!
と進め方を効率的にすることができます。
パターン3:問いの時点で”価値判断”が一定済んでいる
典型的な“シャープな問い”のパターンの3つ目は、「問いの時点で”価値判断”が一定済んでいる」というパターンです。
具体例を見ていきましょう。
<具体例>
×利用者は、このシャンプーにどんな不満を持っているか?
○肌が弱い利用者は、このシャンプーにどんな不満を持っているか?
前者は利用者全般に関する問いである一方、後者は利用者の中でも「肌が弱い人」にフォーカスを当てています。
これは、
今後は、一般的な利用者よりも、肌の弱い利用者を優先して獲得していくぜ!
という価値判断が共通認識としてあることを前提とした上で問いを立てていることになります。
このような問いを立てるタイミングとしてよくあるのは、
SNSでこの製品を調べると、一般的な利用者からは概ね好評のようだが、肌の弱い人から不評のようだ…
といった感覚値が部署内で共有されている場合などです。
なんかあの層にはこの製品が刺さらないんだよな〜
ということが分かっているのであれば、それを前提に問いを立てた方が投資対効果が高くなります。
<具体例>
×販促キャンペーンの一般的な失敗要因は?
○競合他社A社が販促キャンペーンで失敗した要因は?
前者は一般的な販促キャンペーンの失敗要因を問うているのに対し、後者は
一般論はいいから、仮想敵のA社がどうして失敗したのかを知りたい!
という問いになっています。
「一般的な販促キャンペーンの失敗事例」という粒度感だと抽象的すぎるという場合であっても、検討範囲の絞り方としては
- 業種で絞る
例:自社が属するフィットネスジム業界での販促キャンペーンの失敗事例は〜 - 販促キャンペーンの内容で絞る
例:「お友達紹介キャンペーン」で失敗した事例は〜
などなど色々あります。
そんな中、
競合他社A社の事例以外はいらない!
というのは中々踏み込んだ価値判断ですよね。
これは、
- iOSにとっての「Android」
- ニコニコ動画にとっての「YouTube」
など、絶対的な“仮想敵”があるケースなどで使われるイメージです。
絶対的な“仮想敵”がいる場合は、それ以外の事例を探してもあまり意味ないですからね。
個別具体な論点を起点に、問いを高次元化していくやり方
以上は、抽象度が高い論点を起点に解像度を高めていくやり方でした。
次にご紹介するのは「個別具体な論点を起点に、問いを高次元化していくやり方」です。
これを聞いて、もしかしたら
解像度を上げるやり方と全く逆のことをやればいいんじゃないの?
と考える方もいるかもしれませんが、それは違います。
前出の例を再び取り上げ、あなたが
自分のラーメン屋を今後どのように経営して行こうかなぁ?
近くの大学のアメフト部がよくウチの店に来てくれるけど、もっともっと喜んでもらいたいなぁ
と考えている場合を考えてみましょう。
ここで、
- 近くの大学における部活/サークル別の所属人員数は?男女比は?
という具体的すぎる問いを立てると、「具体的だけど、”最終的な論点”との繋がりが分かりにくい…」という問題が発生しましたね。
ではこれを、“解像度を上げるやり方と全く逆のやり方“で抽象化してみましょう。
つまり、
数字、固有名詞、修飾語などの文言を削り、一般疑問詞や一般名詞を使って文言の抽象度を全体的に上げる!
というやり方です。
このやり方で「近くの大学における部活/サークル別の所属人員数は?男女比は?」を変換してみると、
- 近くの大学の学生はどのように分類できて、それぞれのボリュームはいくらか?
といった問いになるはずです。
さて、このように抽象化したとしても、
具体的だけど、”最終的な論点”との繋がりが分かりにくい…
という問題は解決してないことにお気づきでしょうか?
つまり、
数字、固有名詞、修飾語などの文言を削り、一般疑問詞や一般名詞を使って文言の抽象度を全体的に上げる!
という方法では上手くいかないということです。
今回のような
具体的すぎて問題が出ている…
というケースでは、その原因は“着目している視点がズレている”という場合が多いです。
この場合、視点を変えずにただ文言だけを入れ替えても問題は解決しません。
ズレた視点を動かし修正するやり方が必要になります。
ここで私がオススメするのは、
- 「個別具体な論点の”目的”は何なのか?」を考え、それを問いに変換する
- その上で以下の2つの考え方を使って問いをブラッシュアップする
- A. 「その問いを解くためには、先に何を考えなければいけないか?」と前提となる問いを考える
- B. 「その問いの対極にある視点/観点はないか?」と幅出しする
というやり方です。
問題は、1つ目の「個別具体な論点の”目的”を問いにする」ですね。
これが有効な理由ですが、
具体的だけど、”最終的な論点”との繋がりが分かりにくい…
というケースの主な原因は、「数字や固有名詞が多い」ではなく、「目的・手段関係が意識されていない」という場合が多いからです。
具体例で見ていきましょう!
例えば、あなたが人事部で新卒採用の担当者だったとして、
エントリーシートの提出先を決めるに当たって、学生は何の情報を参考としているか?
という論点を思いついたケースを考えてみましょう。
ここで、
- エントリーシートの提出先を決めるに当たって、学生は何の情報を参考としているか?
を起点にした上で、①の「個別具体な論点の”目的”を問いにする」を使ってみると
新卒の募集をかけるに当たり、どのメディア・チャネルを使うと効果的か?
という問いが出てくるのではないでしょうか。
「エントリーシートの提出先を決めるに当たって、学生は何の情報を参考としているか?」と人事部が気にするのは、その情報源を押さえないと優秀な人材をリクルートできないのではと懸念しているからです。
その上で、
- 新卒の募集をかけるに当たり、どのメディア・チャネルを使うと効果的か?
という問いについて、②のAの「その問いを解くためには先に何を考えなければいけないか?」と前提となる問いを考えると、
新卒といっても色々な人がいるので、「弊社に必要な新卒は具体的にどういった人材か?」を考えなければいけない
と出てくると思います。
または、
- 新卒の募集をかけるに当たり、どのメディア・チャネルを使うと効果的か?
という問いについて、②のBの「その問いの対極にある視点/観点はないか?」と幅出しを試みてみると、
メディアとかに募集する方法だと、優秀な学生が応募するのをひたすら待つことになる。
そうではなく、「弊社から優秀な学生を一本釣りできないか?」と考えてもいいかも
というものが出てくると思います。
これらを何度も繰り返しトライアンドエラーすることで、個別具体な問いがどんどん高度な論点に変わっていきます。
そして、様々な粒度感の問いを洗い出し、
今回はどの粒度の問いを検討するべきかな?
と比較することで、より良い粒度感の論点設計ができるようになるのです。
問いの”書き振り”を柔軟に変更できると、自分の思考も柔軟になっていく
論点設計における実務上のポイントの2つ目は、問いの書き振りのバリエーションについてです。
問いの書き振りについて、バリエーションを多く持っていることは非常に重要です。
なぜなら、人は一般的に、
今回の問いは何か?
と、論点を明確に意識することは少なく、深層心理において問いを持っていることが多いため、相手が
(この論点設計は、なんか私の感覚と違うなぁ…)
と感じた場合、
- 論点が問うてる「内容」自体に違和感を持っているのか
- 論点の書き振りだけに違和感を持っているのか(=「内容」自体は問題ないのか)
をはっきりと自覚しないまま、
なんか問いがアッサリしすぎてる気がします
とか、逆に
なんか問いがクドい気がします
といった感覚論的な意見を言いがちだからです。
こうした場合、相手は本当は
論点の書き振りだけに違和感があるなぁ(=「内容」自体は問題ない)
と感じているにもかかわらず、あなたが
問いの「内容」自体に違和感を感じているのだろう
と考えてしまうと、いくら問いを変更したところで意見は擦り合いません。
相手が
- 論点が問うてる「内容」自体に違和感を持っているのか
- 論点の書き振りだけに違和感を持っているのか(=「内容」自体は問題ないのか)
のどちらを求めているか把握できるようになるためには、
問いの意味が本質的に変化するのは、書き振りをどのレベルまで変えたときか?
逆に、どこまでの書き振り変更であれば、問いの意味はほとんど変わらないのか?
といった相場観を持っておく必要があります。
その上で、
問いをこういう感じに直した方がいいんじゃないかなぁ
といった相手の意見を聞きながら、
論点が問うてる「内容」自体がおかしいと感じてるんだろうな
とか
あー、「内容」自体ではなく、問いの書き振りがしっくりこないと感じているんだ
と、問いの内容を変更すべきか、書き振りを変更すべきかを判断できるようになる必要があります。
これはつまり、
「問いの意味をほとんど変えずに、書き振りだけ変えられるようにする」という技術を持とう!
ということです
前述の「解像度を上げる」と若干被る部分もありますが、どういった書き振りがあるかはぜひ把握しましょう。
具体例を見ながらでないとよく分からないと思いますので、典型的な書き振りのバリエーションを、
- スカイツリーと東京タワーの入居テナントを比較すると、どこが共通で、どこに差異があるのか?
を例にして考えてみましょう。
この問いを、問いの意味を極力変えずに書き振りだけ変えようとすると、どのようなバリエーションがあるでしょうか?
一つずつ見ていきましょう!
バリエーション1:“問い方”を変更する
1つ目は「“問い方”を変更する」です。
「5W1H」を問う論点を、「有無・程度・状態」を問う論点に変更したり、「A or B」の形の論点に変更したりします(もちろん、その逆方向もあります)
元の問い:
スカイツリーと東京タワーの入居テナントを比較すると、どこが共通で、どこに差異があるのか?
「有無・程度・状態」の論点への変更例:
入居テナントにおける共通点・差異は、スカイツリーと東京タワーでどれほど存在しているか?
「A or B」の形の論点への変更例:
入居テナントがより充実しているのは、スカイツリーか?それとも東京タワーか?
バリエーション2:文中の要素を並べ替える
2つ目は「文中の要素を並べ替える」です。
要素の並び方を変更する際は、
- 複数登場する要素を前に切り出す(もちろん、その逆方向もあります)
- 並列に並べられている要素を、主従をつけて並べ替える(もちろん、その逆方向もあります)
といった点を主に検討することになります。
元の問い:
スカイツリーと東京タワーの入居テナントを比較すると、どこが共通で、どこに差異があるのか?
要素を前に切り出す変更例:
入居テナントについて、スカイツリーと東京タワーを比較すると、どこに共通点・差異があるか?
要素を主従をつけて並べ替える変更例:
スカイツリーの入居テナントは、東京タワーに比べ、どこに差異があるか?
バリエーション3:文自体を分ける/まとめる
3つ目は「文自体を分ける/まとめる」です。
1文で書かれた文を2文以上で書き直したり、逆に複数の文を1文で書き直したりします。
特に「1文で書かれた文を2文以上で書き直す」については
- 主従のある2つ以上の文章に直す
- 並列な2つ以上の文章に直す
の2つがあります。
元の問い:
スカイツリーと東京タワーの入居テナントを比較すると、どこが共通で、どこに差異があるのか?
主従のある2文への変更例:
スカイツリーにはどういったテナントが入居しているか?東京タワーに比べ、どのような差異があるか?
並列な2文への変更例:
スカイツリーにはどういったテナントが入居しているか?一方、東京タワーにはどういったテナントが入居しているか?
バリエーションの参考:入れ子構造または補足の形で情報を付加
参考までに、「問いを入れ子構造に変更する、または補足の形で情報を付加する」というパターンもご紹介します。
「問いの書き振りを変更する」というよりは、前述の「解像度を上げる」の手法に近いのですが、こういった書き振りもあることを把握しておくと便利です。
元の問い:
スカイツリーと東京タワーの入居テナントを比較すると、どこが共通で、どこに差異があるのか?
入れ子構造への変更例:
以下の観点で、スカイツリーと東京タワーの入居テナントを比較すると、どういった差異があるのか?
・テナント数
・サービスのバリエーション
・ジャンル別の割合
・…
補足情報の付加の例:
以下の観点で、スカイツリーと東京タワーの入居テナントを比較すると、どういった差異があるのか?(テナント数、サービスバリエーション、ジャンル別割合、…)
他にも書き振りのバリエーションはまだまだあると思います。
自分なりのバリエーションを増やし、自由自在に論点設計できるようになってくださいね〜!
オススメの書籍
今回の記事に関連したオススメの書籍は以下の通りです。
『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』
『イシューからはじめよ』
『論点思考』
『答えのないゲーム」を楽しむ思考技術』
『企業参謀』
おわりに
いかがでしたでしょうか?
お仕事の参考になれば幸いです!
論点の重要性や典型的パターンについては前回記事にしていますので、そちらもご参考いただければ幸いです。